【重要なお知らせ】2026年4月より契約団体専用サービスに移行します。詳細はこちら

甲状腺悪性リンパ腫
こうじょうせんあくせいりんぱしゅ

最終編集日:2026/1/5

概要

甲状腺の悪性リンパ腫は、甲状腺に発生するまれな悪性腫瘍(がん)で、甲状腺悪性腫瘍全体の約2%を占めます。多くが慢性甲状腺炎(橋本病)の長期経過中に発生し、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」と「MALTリンパ腫」が代表的な組織型です。中高年の女性に多くみられます。

リンパ腫は、リンパ球ががん化することで生じる「血液のがん」の一種です。リンパ節や胸腺、脾臓など、リンパ系の臓器を中心に発生しますが、胃や腸、甲状腺などのリンパ系以外の臓器にも生じることがあります。甲状腺悪性リンパ腫は、治療に対する反応性が比較的良好で、予後が良い症例が多いことが特徴です。治療法の進歩により、現在では5年生存率は80%を超えています。

原因

多くの症例では明確な原因はわかっていませんが、慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う慢性的な炎症が、特にMALTリンパ腫の発症に関与していると考えられています。

症状

腫瘍の発育が比較的速いことが多く、首の甲状腺の部分が急に腫れる、嗄声(声のかすれ)、呼吸困難、嚥下困難、発熱などが起こります。とくに腫瘍が急速に大きくなった場合には、気道が圧迫され、急な呼吸困難を起こすこともあり、緊急対応が必要になる場合もあります。

検査・診断

問診、触診、超音波(エコー)検査により悪性リンパ腫が疑われる場合は、CT検査やPET検査を行い、腫瘍の大きさ、広がり、周辺臓器への影響、遠隔転移の有無などを評価します。

診断には、組織学的検査が重要です。「穿刺吸引細胞診」が行われることがありますが、甲状腺悪性リンパ腫では診断が確定しにくい場合も少なくありません。そのため、確定診断や組織型の決定には、外科的に切開して採取・検査する生検(オープンバイオプシー)を行うことが一般的です。

併せて血液検査で甲状腺機能を評価します。必要に応じて、IGH遺伝子再構成検査などの分子生物学的検査が補助診断として行われることもあり、慢性甲状腺炎や他の甲状腺腫瘍との鑑別が行われます。

治療

治療方針は、病期、組織型、腫瘍の広がり、患者さんの年齢や全身状態を考慮して決定されます。おもに化学療法(複数の抗がん剤を組みあわせて行うCHOP療法やR-CHOP療法など)と放射線治療が行われます。

腫瘍が甲状腺内に限局している場合や、気道圧迫などの症状が強い場合には、症状緩和や診断目的で手術が行われることもあります。DLBCLは増殖が速く、呼吸困難に陥ることもありますが、化学療法および放射線療法に対する反応性は良好で、寛解が得られることが多いとされています。一方で、全身に病変が及ぶ場合もあるため、治療後も慎重な経過観察が必要です。

MALTリンパ腫は、進行が緩やかで悪性度が低いことが多く、症例によっては経過観察となることもあります。ただし、一部では、DLBCLへ移行する可能性があるため、腫瘍の性質を見極め、適切なフォローアップが重要です。慢性甲状腺炎がある患者では、リンパ腫発症の可能性を念頭に置いた経過観察が推奨されます。

Xで送る
LINEで送る
Facebookで送る
URLをコピー

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣