夜尿症(おねしょ)やにょうしょう・おねしょ
最終編集日:2024/6/7
概要
夜尿症診療ガイドライン(日本夜尿症学会)では、夜尿症を「5歳以上の小児で、1カ月に1回以上かつ3カ月以上続く」ものと定義しています。
生まれてからずっと続く夜尿を「一次性」と呼び、発症頻度は75~95%、6カ月以上夜尿がなかった後で再発したものを「二次性」と呼び、頻度は10~25%とされています。
また、症状が夜尿だけのものを「単一症候性」、昼間の尿失禁(おもらし)などほかの症状を伴うものを「非単一症候性」と呼びます。約75%は夜尿だけの単一症候性といわれます。
有病率は、単一症候性で5歳が15%、7歳が10%、10歳が5%で、思春期までに1年間に約14%ずつ自然に治っていくと考えられています。
原因
おもに3つの要因の関与が挙げられます。
●睡眠から覚醒する能力が低い……起こしても、また尿意があっても、なかなか起きられない状態にあります。
●膀胱の夜間の蓄尿力が低い……膀胱容量の減少や、排尿筋と骨盤底筋の連動の異常があり、夜尿が起こると考えられます。
●夜間多尿……夜間の抗利尿ホルモン(尿量を調整するホルモン)の分泌低下、飲水過多などの関与が考えられています。
そのほか、中枢神経の発達の遅れ、遺伝的要因なども挙げられます。なお現在では、心理的な要因は夜尿症の原因ではなく、夜尿症によって引き起こされる症状と考えられるようになっています。また、育て方や子どもの性格の問題でもありません。
症状
就寝中にトイレに起きることなく、尿失禁を起こしてしまいます。
非単一症候性では、昼間(覚醒時)の尿失禁、急に起こる尿意切迫感、尿意を我慢できない、尿が出にくい、排尿回数が少ない(1日3回以下)、あるいは多い(1日8回以上)などの下部尿路症状(LUTS)を伴います。
検査・診断
問診が重要になります。これまでの夜尿の状況、昼間の排尿の様子、食事や飲水の状況、病歴などをくわしく聞き取ります。受診前に「夜尿日誌」をつけて、夜尿の回数や昼間の排尿回数、生活状況がわかるようにしておくとよいでしょう。1週間に4日以上の夜尿を「頻回」、3日以下の夜尿を「非頻回」と診断します。
また、単一症候性か非単一症候性かをみるために、機能障害性排尿症状スコア(DVSS)を用いて症状の評価を行います。
尿検査、血液検査で糖尿病や尿崩症、腎機能障害などがないことを確認します。
治療
まず生活指導が行われ、効果がみられない場合には薬物療法やアラーム療法を考慮します。
〈生活指導〉
●昼間の飲水は、体重1kgにつき50mL/日以内にし、就寝2時間前からは200mLまでに抑える。
●夕方以降、牛乳や乳製品、塩分、たんぱく質の摂取を控えるようにする。
●尿意や便意を感じたら我慢しない。
●便器に座ったときに両足がつくようにする(つかなければ踏み台などを置く)。こうすることで骨盤底筋の弛緩(しかん)を促す。
●1日6~7回、決まった時間に排尿するよう習慣づける(定時排尿)。就寝前には必ずトイレに行く。
●便秘はLUTSを誘発するため、適切な排便習慣をつける。
〈薬物療法〉
●抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン製剤)……夜間の尿量を減少させます。就寝2~3時間前から水分制限を行い、就寝前に服薬します。口腔内崩壊錠で、水なしで飲むことができます。飲水の制限を行うのは、副作用として水中毒(水分が過剰になり、低ナトリウム血症を起こすなど、電解質のバランスが崩れる)のリスクがあるためです。
●抗コリン薬……非単一症候性にのみ用いられます。昼間の尿意の切迫感や頻尿などを改善します。抗利尿ホルモン薬と併用します。
●漢方薬……小建中湯(しょうけんちゅうとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)、六味丸(ろくみがん)などの漢方薬が証(漢方の基準でみた体質)に合わせて用いられることもあります。
〈アラーム療法〉
頻回の夜尿症に適応されます。下着に付けたセンサーとアラームからなり、夜尿を起こすとアラームが鳴って、患児を起こしてトイレに行くように促す仕組みです。つまり「おねしょをすると起こされる」という状況が続くことで、子どもがおねしょが嫌いになるという状況をつくることが大切です。効果が出るまでに時間はかかりますが(6〜8週間)、効果があれば最低3カ月は続けます。3~4カ月間、毎日使用することで、夜間の膀胱容量の増大が見込めるとされています。現時点では保険適用になっておらず、自費購入が必要だったり、同室のきょうだいや家族の睡眠が妨げられるなどの短所はありますが、治療効果は高く再発率は低いことから「夜尿症診療ガイドライン2021」で薬物療法の抗利尿ホルモン薬での治療とともに、現在、第一選択の治療として推奨されている方法です。
セルフケア
病後
夜尿症は成長にしたがって減少しますが、成人してからも夜尿症に悩む患者さんは一定数いると考えられています。小児期の夜尿症と、成人後の昼間の頻尿、尿意切迫感を感じる「過活動膀胱症状」などとの関連も報告されていますが、まだ明らかにはなっていません。
夜尿は子どもにはよくみられる症状ですが、夜尿によって患児のQOL(生活の質)が低下し、神経質、自信のなさなど、心理的な影響も見逃せません。とくに頻回な夜尿症の場合は放置すると治りにくくなることもあります。夜尿が続くようなら、かかりつけの小児科医に相談し、必要があれば泌尿器科専門医を紹介してもらいましょう。
監修
しみず巴クリニック腎臓内科
吉田顕子
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