神経内分泌腫瘍

しんけいないぶんぴつしゅよう

最終編集日:2023/12/13

概要

神経内分泌腫瘍(NEN)は「神経内分泌細胞」に由来する腫瘍です。神経内分泌細胞は全身に存在するため、NENもさまざまな部位に発生します。もっとも頻度が高いのは膵臓・直腸・胃などの消化器に発生するもので、約60%を占めるといわれています。次に肺などの呼吸器系のものが約30%を占めます。

NENは患者数の少ない「希少がん」に分類されています。悪性度の低いものから、進行が速い悪性度の高いものまで多種あります。悪性度の高いものを「(低分化型)神経内分泌がん(NEC)」、低いものを「(高分化型)神経内分泌腫瘍(NET)」と呼びます。さらに、腫瘍がホルモンを産生する「機能性NET」と、ホルモンを産生しない「非機能性NET」という分類もあります。


●発生部位別の特徴

〈消化器のNEN〉……機能性NETが多く発生します。腫瘍がつくり出すホルモンには、インスリン(産生腫瘍をインスリノーマと呼ぶ)、ガストリン(ガストリノーマ)、グルカゴン(グルカゴノーマ)、VIP(腸管ペプチドの一種。VIPオーマ)、セロトニン(セロトニン産生腫瘍)、ソマトスタチン(ソマトスタチノーマ)などがあり、それぞれの症状はホルモンによって異なります。

〈肺のNEN〉……肺のNENは消化器のNENと少し分類が異なり、小細胞がん、大細胞神経内分泌がん、定型カルチノイド、異型カルチノイドの4つに分けられます。もっとも頻度が高いのは小細胞がんです。小細胞がん、大細胞神経内分泌がんは高悪性度NETとされ、男性に多く、喫煙との関連が指摘されています。定型・異型カルチノイドは、低悪性度から中悪性度NETとされ、喫煙との関連は薄く、女性に好発します。

原因

NENの原因は、まだ明らかにされていません。肺の高悪性度NETには喫煙が関与していると考えられています。一部に遺伝的な要因が関与しているものもあり、関連遺伝子によって、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN-1)、神経線維腫症1型 (NF1:フォンレックリングハウゼン病)、結節性硬化症(TSC)、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)などに分類されます。

症状

NENの多くは、初期には無症状です。ある程度腫瘍が大きくなってから、発生した部位や腫瘍の性質によって、次のような症状が現れてきます。


●消化器……機能性NETの場合は産生ホルモンによって、低血糖、発汗、めまい、動悸、皮膚の紅斑、糖尿病、下痢、胆石症、心窩部痛などが現れます。非機能性NETでは、腹痛や黄疸(おうだん)が現れることがあります。また、腫瘍が大きくなると、腹部にしこりが触れるようになります。


●肺……せき、たん、血痰、呼吸がしづらい、嗄声(しゃがれ声)、倦怠感、食欲不振、上半身のむくみなどが起こります。機能性NETの場合には、筋力低下、高血圧、肥満、下痢などを伴います。

検査・診断

超音波(エコー)検査、造影CT、造影MRIなどの画像検査で腫瘍の存在、大きさ、広がり具合などを確認します。機能性NETが疑われる場合には、血液検査で血清ホルモン値を調べ、また腫瘍の種類にあわせてソマトスタチン受容体シンチグラフィなどを行うこともあります。確定診断には超音波下で穿刺し、組織を採取して病理組織診断が行われます。ほかの種類の腫瘍・がんとの鑑別が重要です。

治療

治療の第一選択は手術による切除です。腫瘍の広がりが小さく切除しやすい、転移がない、あるいはあっても数が少ない、腫瘍の数を減らすことで症状の改善が見込めるなどの場合に適応されます。肝臓に転移がみられる場合には、ラジオ波焼灼術、冠動脈塞栓術などの局所療法が行われることがあります。

手術がむずかしい場合や再発例には、薬物療法が選択されます。抗がん剤のほか、機能性NETにはホルモンの作用を抑制するホルモン製剤(ソマトスタチンアナログ)が、進行したNETには分子標的薬などが用いられます。

NENには外照射による放射線治療は行われませんが、機能性NETのうち、ソマトスタチンが関与している場合には「放射性核種標識ペプチド治療(PRRT)」が2021年から保険適用となりました。これは放射性物質を含んだ薬を内服し、腫瘍を攻撃する方法で、一種の「放射線の内照射治療」です。

進行が速く、悪性度の高いNECや肺の小細胞がんには、基本的に複数の抗がん剤を組みあわせた治療が行われます。

セルフケア

予防

一部で遺伝的な要因が明らかにされているものがありますが、ほとんどの場合、原因は明らかにされてはいません。しかし、脳卒中や認知症などと同じように、偏った食生活や糖尿病、ストレスなどがマイナス因子として関係していることが明らかになってきています。生活習慣を改善させていくことは神経内分泌腫瘍でも大事なことといえます。

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司

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