急性出血性結膜炎きゅうせいしゅっけつせいけつまくえん
最終編集日:2023/9/25
概要
ウイルス感染による、急性症状を現す結膜炎です。1週間程度で自然治癒するケースがほとんどですが、起因ウイルスによっては半年から1年後に運動麻痺の症状が現れることもあり、注意が必要です。
ウイルスは感染力が強いため、学校感染症第3種に指定され、感染の恐れがないと医師が認めるまで出席停止と決められています。季節を問わず、成人も感染しますが、7歳以下の小児、とくに1~4歳で多くみられます。世界的には数万人単位の流行が起こる地域もあり、日本では1990年代にいくつかの流行がみられたものの、2000年以降の患者数は年に1500人未満となっています。
原因
エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24変異型に感染して起こります。おもに接触感染で、罹患者の手指や触ったものに触れる、罹患者が使ったタオルなどを共用することなどが感染経路になります。
症状
潜伏期間は1日から数日と短く、多くは目の強い痛み、異物感から症状が始まります。結膜の充血・出血、目やに、目の表面の濁り、まぶたの腫れなどが現れ、白目の部分は真っ赤になります。両目に起こるのが特徴的です。全身の症状として、頭痛、発熱などが現れます。
検査・診断
目やにと、まぶたの裏から細胞を綿棒でこすり取ってウイルスの検出を行い、診断をつけます。ウイルス性の結膜の感染症は、ほかにアデノウイルスでも起こることがあります。鑑別は必要ですが、いずれも抗ウイルス薬がないため、治療への影響はあまりないといっていいでしょう。
治療
エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24変異型に対する抗ウイルス薬は、現時点ではありません。細菌による二次感染の予防として、抗菌薬の点眼が行われます。症状が強い場合には、ステロイドの点眼薬を用いて炎症を抑えます。また、全身症状に対しては、解熱鎮痛薬などを用います。
多くは約1週間で症状は治まりますが、ウイルスが完全に排除されるには、数週間から数カ月かかると考えられています。医師の指示に従い、感染を広げないようにします。
なお、原因ウイルスがエンテロウイルス70型の場合、治癒後半年から1年経ってから、運動麻痺の症状が現れることがあるため、経過観察をつづける必要があります。
セルフケア
療養中
急性出血性結膜炎の原因ウイルスの感染力は非常に強いため、以下のような感染予防策が不可欠です。
●罹患したら、医師の許可が出るまで、登園・登校は控える、プールに入らない。
●目の周辺をなるべく触らない。触ったら、すぐに石けんで手を洗う。
●目を拭ったティッシュなどはすぐに捨てる。
●コンタクトレンズは症状が治まるまで使用しない。
●罹患者の入浴は、シャワーで済ませるか、順番を最後にする。
●タオル、枕などを共用しない。
●手洗いを励行する。
●ドアノブなどはアルコール消毒する。
●罹患者が使ったものは煮沸、または家庭用塩素系漂白剤などで消毒する。
監修
井上眼科病院 院長
井上賢治
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