多嚢胞性卵巣症候群たのうほうせいらんそうしょうこうぐん
最終編集日:2022/3/30
概要
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、①月経異常、②多嚢胞卵巣(たのうほうらんそう)、③血中の男性ホルモン(アンドロゲン)高値・黄体形成ホルモン(LH)高値、の3つの病態をもつ疾患です。
アンドロゲンが過剰になるために、卵巣内で卵胞が成熟できなくなり、嚢胞状になってたまってしまいます。超音波検査で卵巣内を見ると、嚢胞状の卵胞がつながって映し出されることからネックレスサインとも呼ばれます。スムーズな排卵は起こりにくくなるため、不妊症の原因として重要な疾患といえます。
発症の頻度は、生殖年齢女性の5~8%とされています。
原因
原因として、アンドロゲンの分泌過剰、インスリン抵抗性による高インスリン血症、視床下部の機能障害によるLH分泌過剰、遺伝的要因などが挙げられていますが、完全には明らかになっていません。これらの要因が複雑に関係しあっていると考えられています。
症状
無月経、稀発月経、月経周期が長い(35日以上)などの月経異常が初経時からつづきます。また、周期的な出血はあるのに排卵を伴っていない無排卵周期症がみられることもあります。
アンドロゲンが過剰になることから、多毛やにきびが現れやすくなります。また、肥満の頻度が高くなり、一般成人女性の肥満頻度が8.7%であるのに対し、PCOSの女性は25.3%となっています。
検査・診断
問診、内診、超音波検査、血液検査を行い、①月経異常、②多嚢胞卵巣、③血中の男性ホルモン高値・黄体形成ホルモン高値を満たせば、PCOSと確定診断されます。
超音波検査では特徴的なネックレスサインがみられます。片方の卵巣に2~9mmの卵胞が10個以上存在するかどうかが診断の目安になります。
血液検査では、アンドロゲン値、LH値、卵胞刺激ホルモン(FSH)値を測定します。PCOSではFSHよりもLHが高くなる特徴があります。空腹時血糖値の測定で糖尿病の有無、予備群であるかどうかも確認します。
なお、クッシング症候群、副腎酵素異常、体重減少性無月経の回復期などとの鑑別診断も重要です。
治療
妊娠・出産を希望する場合は、経腟超音波検査で卵胞発育をモニタリングしながら、排卵誘発剤を用いて排卵を起こします。内服だけで効果が現れない場合には、注射剤も用います。ただしPCOSの患者さんは排卵誘発剤に過剰に反応する傾向にあり、薬を少量増やしただけでも卵巣が腫れあがって腹水がたまる「卵巣過剰刺激性症候群」を起こすリスクがあります。そのため、薬の増量には慎重さが要求されます。これらの治療で妊娠が成立しない場合には、体外受精や卵巣に孔を開ける手術が考慮されます。手術を行うと、自然に排卵が起きたり、排卵誘発剤の効果が出やすくなったりします。
妊娠・出産の希望がない場合には、ホルモン療法(低用量ピルやカウフマン療法)で定期的な月経を誘発します。
セルフケア
療養中
PCOSの患者さんは、将来的な糖尿病発症のリスクが高いとされています。また、メタボリックシンドロームの予備群とも考えられています。
妊娠を望まないからと月経異常を放置すると、子宮体がんのリスクが高くなることもわかっています。
早期に発見できれば、治療に対する感受性も高く、治療効果が期待できます。糖尿病やがんの予防のためにも、適切な治療をタイミングよく受けるようにしましょう。
監修
Raffles Medical Clinic Hanoi 婦人科
秋野なな
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