増加中の肺NTM症(肺非結核性抗酸菌症)って?

最終編集日:2024/1/22

「肺NTM症」とは「非結核性抗酸菌(non-tuberculousis mycobacteria: NTM)」(非伝染性の抗酸菌)が原因となって発症する呼吸器感染症です。聞き慣れない病名かもしれませんが、近年、中高年の女性を中心に患者数が増加中の病気です。NTMはごく身近にある菌であり、誰でも発症の可能性があるので注意が必要です。


●感染症だが人から人へと感染することはない


NTMは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌の総称で、200種以上の菌が存在します。この菌が肺に侵入することで発症する呼吸器感染症が肺NTM症です。しかし、結核などとは違い、人から人へと感染することはありません。

NTMは土壌や水の中にいる菌です。家の中では、浴室や台所などの水まわり(排水口や給湯口、シャワーヘッドなど)にいて、特にぬめりは菌の温床になっています。このように身近にある菌なので、誰もが知らないうちに吸い込んでいる可能性があります。しかし吸い込んだとしても、ほとんどの人は肺NTM症を発症することはありません。なぜ発症する人としない人がいるのか、そのメカニズムはまだ解明されていませんが、40代以上の女性でやせ型の人が発症しやすい傾向にあります。

なお「肺MAC症」という病気がありますが、これは肺NTM症の一種です。日本では肺NTM症の8割以上は肺MAC症といわれています。


●無症状のまま静かに進行することも多い


肺NTM症は無症状で静かに進行することが多く、早期発見をしにくい病気といえます。そのため、健康診断や人間ドックのCT検査、X線検査で肺に病変が見つかり、診断につながることがよくあります。

病気が進行すると、長引くせきやたん、疲労感、食欲減退・体重減少といった症状がみられるようになり、息切れ、胸の痛み、血痰・喀血が出現する場合もあります。こうした症状があったら、放置せずに呼吸器内科を受診しましょう。CT検査で肺の病変が認められ、複数回のたんの検査で菌の存在が確認されれば、肺NTM症と診断されます。

治療は、複数の抗菌薬(抗生物質)を服用するのが基本ですが、経口薬で効果が乏しい場合には注射薬や吸入薬を使うこともあります。菌が消えるまで1〜2年かかりますが、なかなか消えなかったり、再発したりすることも少なくありません。完治の難しい病気といえますが、命にかかわるほど重症化することはまれなため、病状によっては治療せずに経過を観察することもあります。


●水まわりのぬめりの掃除やガーデニングの際はマスクを


肺NTM症を予防するには、NTMをできるだけ吸い込まない対策が必要です。具体的には、浴室や台所などの水まわり(特にぬめり)を掃除するときや、ガーデニングなどで土いじりをする際にはマスクを着用し、しぶきや土ぼこりなどを吸い込まないようにしましょう。入浴後の浴槽の残り湯はすぐ排水し、換気扇をつけて浴室内をよく乾燥させたり、シャワーヘッドをきれいにすることも心がけましょう。ただし、NTMを完全に排除することは不可能なので、過度に神経質になる必要はありません。

病気を遠ざけるには、体力や免疫力が低下しないようにすることも重要です。栄養バランスのよい食事をし、十分な睡眠をとり、適度に運動をするなど、からだのコンディションを良好に保つようにしましょう。

監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽 浩一郎

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