適応障害は、まず知ることから
最終編集日:2025/9/22
ニュースやSNSでよく耳にする「適応障害」ですが、どういう病気なのかわからないという人も少なくないのではないでしょうか。
ストレスで気分が沈むことは誰にでもありますが、気分の落ち込みや不安が強く、仕事や家事が手につかないほどになる場合には、適応障害の可能性があります。
●適応障害とは?
生活の中で生じるストレスが原因となり、心や行動に大きな変化が現れて、日常生活に支障が出ている状態です。
<主な症状>
・憂うつな気分
・不安感が強い
・集中力が落ちる
・寝つきが悪い、眠れない
・めまい、吐き気、腹痛、頭痛など、からだの不調
・感情の起伏が激しくなる(すぐに泣く、怒る)
症状は情緒面、身体面、行動面のいずれにも現れ、職場や学校に行けない、家事ができないなど、社会生活が著しく障害されることがあります。
●うつ病とはどう違うの?
適応障害とうつ病は似ていますが、次の点が異なります。
<適応障害>
ストレスの原因がはっきりしていて、原因から離れると症状が改善しやすい。通常はストレスが消失すると6カ月以内に落ち着く。
<うつ病>
ストレスの原因から離れても症状が続き、楽しいことがあっても気分が晴れない。時間が経っても抑うつや不安感が持続する。原因は明確でないこともあり、いくつかの要因が重なっている場合もある。
嫌なことや悲しいことがあると落ち込むのは、自然な心の反応です。ただ、憂うつや不安感がいつもより強かったり、数週間経っても気分が回復しなかったりする場合は注意が必要です。
適応障害とうつ病は症状が似ているため、自己判断は難しい病気です。専門医の診断を受けることで、適切な治療やサポートにつながります。
●受診の目安は?
適応障害は、早期に適切な対処をすれば、多くの場合は回復します。一方で、強いストレスの環境下でがんばり続けると、うつ病やアルコール依存症など、ほかの精神障害に移行することもあります。
原因は、職場や学校、家庭での人間関係や環境の変化などが多く、いわゆる「五月病」もその一種です。また、夏季休暇明けのこの時期にも注意が必要です。
転職や部署異動、引越し、家族構成の変化など、大きな環境変化があった後に不調がみられる場合は、早めに周囲や医療機関に相談しましょう。
●適応障害の治療
適応障害の治療で大切なことは、まずはストレスによる症状がやわらぐように、環境を調整することです。仕事の負担を軽くするなどストレスの原因を減らし、周りからサポートを受けられるようにします。症状が重く、今の仕事を続けることが難しいときは、休職や配置換えが必要になります。職場の場合、短期間の休養(2週間〜1カ月程度)をとることも効果的です。
次に重要なことは、「ストレス対処力」を高めることです。認知行動療法などの心理療法を通じて、自分の考えや行動パターンを見直し、ストレスに適応できる力を育てます。
また、必要に応じて薬物療法もとり入れられますが、補助的に少量・短期間が基本です。
適応障害は「心の柔軟さ」が一時的に失われている状態ともいえます。早めに環境を整え、専門家のサポートを受けながら回復を目指しましょう。多くの場合、適切な対応で少しずつ自分らしさを取り戻すことが可能です。
無理をせず、心の声にやさしく耳を傾けてあげましょう。
監修
人形町メンタルクリニック 院長
勝 久寿