日本人の有病率は世界一!ナルコレプシーとは

最終編集日:2025/6/23

ナルコレプシー」とは、睡眠障害のなかの過眠症に分類される病気です。昼間、病的な眠気に襲われ、眠ってしまうことが主な特徴です。10代から20代前半にかけて発症することが多く、原因は明らかになっていませんが、遺伝的な要素と環境的な要素が複雑に絡み合い発症すると考えられています。

日本の有病率は約600人に1人で、世界で最も高いと報告されています。あまり聞き慣れない病名かもしれませんが、実は意外と多くの人が患っている病気といえます。


●ナルコレプシーの特徴的な症状とは

睡眠を十分にとっているにもかかわらず、昼間、病的な眠気に襲われ、眠ってしまいます。1回の居眠り時間は数分~30分程度で、起きたあとはすっきりしますが、しばらくするとまた眠気に襲われます。これを1日に何度もくり返すのが特徴的な症状です。重症化すると、時や場所などにかかわらず突然眠ってしまう睡眠発作が現れ、会話中や歩行中など、信じられないような場面で突然眠ってしまうこともあります。

その他の症状としては、次のようなことが見られる場合もあります。

「情動脱力発作(カタプレキシー)」……強い感情の動きがあったときに、突然からだの力が抜けて膝や腰がカクンと脱力してしまう。

「入眠時幻覚」……眠りに入る前後に、現実との区別がつきづらい鮮明な夢を見る。

「睡眠麻痺」……寝入りばな、または睡眠から目覚めるときに、からだを動かそうとしても動かせなくなる(金縛りのような状態)。


●「怠けている」と誤解されることも

夜更かしをした翌日に眠気を感じたり、昼食後に強い眠気に襲われたりすることは、多くの人が日常的に体験していることです。ところが、ナルコレプシーの場合、睡眠時間や食後に関係なく突然眠気が起こるため、社会生活に支障をきたすこともあります。試験中や商談中、車の運転中に眠ってしまうなど、学生時代は不登校につながりやすく、社会に出てからは対人トラブルなどで退職に追い込まれる要因となることもあるようです。

また、周囲からは眠気について「怠けている」と誤解されてしまうケースも多く、自身ではただの疲れだと病気に気づかず、治療が遅れてしまうことも少なくありません。

ナルコレプシーが日常生活へ及ぼす影響は大きく、QOL(生活の質)を低下させる要因になりやすい病気ともいえます。



●対症療法で症状をコントロール

近年、研究が進んでいるものの、根本的な原因が解明されていないため、残念ながら完全に治すための治療法は確立されていません。治療としては、生活リズムを整えながら、薬で眠気をコントロールし症状を軽くしていく対症療法が行われます。

早期の治療が重要なため、ナルコレプシーを疑ったときは、早めに睡眠外来や精神科、神経内科等を受診しましょう。

一方、家族や友人、職場の人などに、ナルコレプシーについて正しく理解してもらうことも非常に大切です。ナルコレプシーと向き合いながらより良い生活を築いていくためには、周囲の理解とサポートがあってこそと言えるでしょう。


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監修

医師・小児スリープコンサルタント・睡眠専門家

森田麻里子