特定原材料にくるみが追加~増える大人の食物アレルギー
最終編集日:2024/6/17
最近、大人になってから食物アレルギーになる人が増加しています。アレルギーを引き起こすことがわかっている食品のうち、食品表示法によって表示義務がある「特定原材料」も2023年3月にくるみが追加され、全部で8食品になりました。
●免疫の過剰反応で起こる食物アレルギー
食物アレルギーとは、ある特定の食物を食べたときに、免疫学的なメカニズムが関与して体にとって不利益な症状を起こすことをいいます。免疫学的なメカニズムとは、ウイルスや細菌などの有害な異物が侵入したときにそれを排除しようとする体のしくみですが、それが過剰に働いて食物の中のたんぱく質などを異物と認識してしまうのが食物アレルギーです。主な症状はかゆみや発赤(赤み)、じんましんなどの皮膚・粘膜症状ですが、重篤な場合はこれらの症状に加え、呼吸困難、血圧低下といった生命に関わる症状が現れ(アナフィラキシー)、その場合は救急処置が必要です。
●大人にも増えている食物アレルギー
食物アレルギーは乳幼児に多いというイメージがありますが、大人になって初めて食物アレルギーになったという人も少なくありません。原因となる食品で多いのは、子どもの場合は鶏卵、牛乳、小麦ですが、大人の場合は果物、野菜が圧倒的に多く、次いで甲殻類(えび、かになど)、小麦です。
なぜ、大人になってから今まで問題なく食べ続けてきた食品に対してアレルギーを起こすのでしょうか。
その発症メカニズムはさまざまで、毎日のように食べている食物に対して、だんだんアレルギーになっていくこともありますし、食べなくても触れることなどが原因となることもあります。例えば、仕事などで特定の食物を頻繁に扱っているうちに、その食物に対して鼻や目、気管支、皮膚などを介してアレルギーを起こすことがあり、さらにはその食物を口にした際にアレルギーを起こすことがあります。例えば、小麦由来の成分が配合された化粧品でアレルギーを起こした人が、小麦を使った食品に対して食物アレルギーを起こすケースなどです。
また、「交差反応」といって、構造が似ているアレルゲンに対して免疫細胞が間違って反応してしまうことがあります。例えば、花粉アレルギー(花粉症)の人が花粉の構造と似た果物や野菜に存在するアレルゲンに反応して食物アレルギーを起こすケースなどです。
食物アレルギーを疑う症状があった場合は、子どもは小児科、大人は症状に応じて皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、内科あるいはアレルギー専門医を受診しましょう。
●表示義務がある「特定原材料」は現在8品
食物アレルギーの人は原因となる食品を避ける必要がありますが、加工食品の場合はその食品が使われているかどうかがわからないこともあります。そこで健康危害の防止という観点から、アレルギーを引き起こすことがわかっている食品のうち、特に発症数、重篤度を勘案して表示する必要性が高いと判断された食品は「特定原材料」に指定され、法令によって表示を義務づけられています。一方、症例数や重篤な症状を呈する者の数が相当数みられるが、特定原材料に比べるとその数が少ないと判断された食品を「特定原材料に準ずるもの」とし、こちらは表示が推奨(任意)されています。
・特定原材料(8食品)
えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生
・特定原材料に準ずるもの(20食品)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
これらの食品は約3年ごとに実施している全国実態調査における発症数や重篤度を踏まえて決められていて、今回は特定原材料に「くるみ」が追加されました。くるみの発症数が増加したためです。ただし、2025年3月31日までは経過措置期間であり、その日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用加工食品は除く)、その日までに販売される業務用加工食品は従前通り(改正前)の規定で表示することができます。
なお、特定原材料でも表示義務があるのは容器包装された加工食品や添加物のみであり、店内で調理・販売する外食メニュー、お弁当、パン、対面販売の惣菜などには表示の義務はありませんので、各自で確認する必要があります。
※2024年5月30日時点の内容です。
監修
国立病院機構 相模原病院 臨床研究推進部・部長 アレルゲン研究室・室長
福冨友馬
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