Question

新型コロナ感染でのがん治療中の重症化リスク

新型コロナ感染におけるがん治療中(術後・化学療法中・放射線療法中など)の重症化リスクを教えてください。

女性/40代

2021/12/21

Answer

すべてのがん患者さんで免疫が落ちるわけではありませんが、がん患者さんは、がんそのものにより免疫状態が低下している可能性があります。また、がん治療には、化学療法をはじめ免疫状態が下がる治療法が用いられます。ウイルス感染症である新型コロナウイルスは、免疫力が低下した状態で感染する可能性が高いと推測されます。


がん治療中では、がんの手術後1カ月以内に新型コロナウイルス感染症にかかった患者さんは重症化しやすいという報告があります。術後間もない人は外出自粛や手洗いなどの感染対策の徹底が必要です。


放射線治療を受けた患者さんが重症化しやすいという報告はありませんが、抗がん剤を併用した化学放射線療法では、免疫力が低下する可能性があります。線量や照射法によっては、胸部への照射で放射線肺臓炎をきたすことがあり、これに新型コロナウイルス肺炎が重なると重症化のリスクが高くなる可能性が出てきます。


がんの種類や薬の種類にもよりますが、多くの分子標的治療薬は治療を継続しても新型コロナウイルスの感染リスク・重症化リスクは上昇しないと推測されます。特にがんの増殖に不可欠な分子をターゲットにした分子標的治療薬(EGFR阻害薬、BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用療法など)の場合、治療によるメリットが大きいと考えられます。

一方、デメリットとしては、薬の副作用である薬剤性肺炎が起こった場合、新型コロナウイルス肺炎と区別がつきにくく、肺炎に対する治療が遅れる可能性がある、一部の分子標的治療薬では、副作用による白血球減少のため新型コロナウイルス感染症の発症リスクが高まる可能性が考えられます。


免疫チェックポイント阻害薬により新型コロナウイルスの感染リスクが高まるというデータはありませんが、治療中に新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいかについては一貫したデータがなく明らかになっていません。このため、2020年6月27日現在では、積極的に免疫チェックポイント阻害薬を中止する根拠はないと考えられています。

ただしデメリットとして、薬の副作用である薬剤性肺炎が起こった場合、新型コロナウイルスによる肺炎と区別がつきにくく肺炎に対する治療が遅れる可能性があるため、理論上、治療中に新型コロナウイルスに感染すると重症化リスクが高まる可能性が否定できないことが挙げられます。

いずれにしても治療のメリットとデメリット、新型コロナウイルスにかかるリスクを減らすための通院間隔について、主治医とよく相談する必要があります。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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