母が毎日体調の不安を訴える
70代の母親が、体調が悪くなると「重い病気ではないか」「がんだったらどうしよう」と毎日のように訴えてきます。母の言動を理解できずに苦しみ、困り果てています。
男性/50代
2021/12/21
健康について関心を持つことは自然な感情であり、人は自分のからだに注意を払いながら毎日の生活を送っています。お母さまの不安も自然なこころの動きですが、これが極端に働くことがあります。たとえば、胃痛がひどいと「胃がんではないか」、動悸が激しいと「心臓疾患かもしれない」と疑い、不安を抱いてしまうのです。このような状態が強くなると、「心気症」という病気の可能性が考えられ、治療が必要になる場合もあります。心気症は聞きなれない言葉だと思いますが、この病気についての理解を深めてみましょう。
通常、気になるからだの変調があっても、しばらくは様子を見たり、休養したりすることで、たいていは回復するものです。また、仕事の忙しさや、日常のさまざまな出来事に意識が向かえば、いつのまにか忘れているときもあります。しかし、心気症の場合、からだへの過剰なこだわりが慢性的に続き、訴えも長く続きます。心気症は高齢者に多いといわれますが、高齢になればなるほど、心身の衰えとともに間近に感じられる死への恐怖も強くなり、からだの変調への注意や関心がより高まるためだと考えられています。
実際にからだの気になるところを検査した結果、医師から「異常はないので心配しなくても大丈夫」と診断されて、お母さまが安心してくれればいいのですが、どんなに医師がていねいに説明し家族が寄り添っても、なかなか納得してくれないのが、この病気の患者さんの特徴でもあります。その結果、納得のいく答えが得られるまで病院を転々と受診する、「ドクターショッピング」といわれる行動を繰り返すこともあります。
そうした言動の影響を直接受けるのは、一番身近な家族ですし、繰り返し同じことをいわれるのは、大変なご苦労だとお察しします。仕事や家事で疲れているときには「またか」とうんざりしたり、腹立たしく思ったりすることもあるでしょう。しかし、訴えを無視すると「家族が受け入れてくれない」と孤立感が強まり、さらにからだへのこだわりが強くなる悪循環になりかねません。家族の対応としては、本人の話や気持ちを否定せずに受け止めることが基本となります。家族が忙しいときや疲れているときなどには、たとえば「今は○○○をしていて難しいけれど、○時間後なら少し話を聞けるよ」などと状況を具体的に説明してあげるとよいと思います。
そして大切なのは、お母さまの訴えを「症状」としてとらえ、理解することです。「(体調や病気のことを)考えたくないのに、考えずにはいられない」という症状に、お母さま自身も苦しんでいると理解することで、多少なりとも共感できたり、状況を客観的に見ることができたりするかもしれません。その上で、からだに異常がないことが明らかになっても訴えが止まず、生活に支障をきたす場合は、不安な気持ちに焦点を当てた治療が必要ですので、精神科や心療内科への受診をお勧めします。お母さまが嫌がる場合は、かかりつけの医師から受診を勧めてもらうのも一案ですし、不眠や頭痛、肩こりなどの不調があれば、それらの改善を目的として受診を勧めてもよいでしょう。大変な状況を一人で抱えずに、専門家のサポートを得ながら、お母さまにとってもあなたにとっても、少しでも安心できる方向性を探っていってくださいね。
回答者
保健同人フロンティアメディカルチーム
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