腎盂・尿管がんじんう・にょうかんがん
最終編集日:2024/3/26
概要
腎盂は腎臓の中央辺りにある、腎臓でつくられた尿が集められる場所です。尿はそこから尿管を通って、膀胱へと運ばれます。腎盂や尿管に発生するがんは、組織学的に90%以上は膀胱がんと同じ「尿路上皮がん」です。
腎盂・尿管がんの患者数はそれほど多くなく、尿路上皮がんの5~10%を占めるとされていて、男女比は2対1で男性に多く、50~70代に好発します。尿路上皮がんは多発することが多く、腎盂がんの患者さんの30~50%に膀胱がんがみられるとされています。
原因
腎盂・尿管がんの発症には、喫煙、尿路結石、尿路の慢性炎症、ある種の医薬品、ある種の化学物質(芳香族アミンなど)に職業的に触れる機会が多いことなどが挙げられます。なかでも喫煙は、もっとも重要な腎盂・尿管がんの危険因子であり、非喫煙者とくらべて3倍の発症リスクがあるといわれています。
症状
膀胱がんと同じように、排尿痛などを伴わない「無症候性血尿」がみられます。約75%に現れるといいます。
がんが尿管を塞いで尿の通過が十分でなくなると「水腎症」という状態になり、わき腹の痛みなどが現れます。尿管が急に閉塞されると、わき腹の痛みのほかに腰痛、腎機能低下の症状(吐き気・嘔吐、倦怠感、むくみなど)が起こることがあります。
検査・診断
尿中にがん細胞があるかどうかを調べる「尿細胞診」と超音波(エコー)検査、造影CT(CTウログラフィ)、MRI検査などで多くは診断がつきます。なかでも、CTウログラフィ検査は、感度・特異度ともに95%前後と高く、現在の第1選択になっています。確定診断のために、腎盂尿管鏡(内視鏡)を用いて肉眼で腫瘍を観察することもあります。
そのほか、必要に応じて逆行性腎盂造影検査などを行います。尿路結石や尿管ポリープ、腎細胞がん、尿管狭窄などとの鑑別診断も行われます。また、多発する場合があるため、がんが見つかった部位の周囲に発生していないかどうかの確認も必要です。
治療
転移がない場合、深達度にかかわらず標準治療としては「腎尿管全摘除術+膀胱部分切除術」となっていますが、局所再発・転移の頻度は決して低くありません(術後の膀胱内再発は約15〜50%)。ただ、患側の腎摘除で起こる腎機能低下による術後の慢性腎臓病(CKD)発症の危険性や、開放手術に伴う侵襲は大きくなります。そのため、①単発、②腫瘍径1㎝未満、③低悪性度、④画像検査での非浸潤がんであることを満たす場合や、もともと全身状態が悪く、透析回避を目的とする場合は、腎温存療法は選択肢として挙げられ、内視鏡下での尿管部分切除術や腫瘍切除術も検討されます。ただし、その後の慎重な経過観察のうえ、再発例や進展例には、上記の術式を検討します。
転移性あるいは再発性の場合は、抗がん剤を用いた薬物療法を検討します。年齢や合併症などにより、局所治療としての根治手術がむずかしい場合には、放射線治療が選択されることもあります。
セルフケア
予防
何よりも禁煙することが必要です。
早期に発見・治療を行えば、治癒率も高く、腎臓を温存することができます。一度でも肉眼的血尿がみられた場合や、無症状でも顕微鏡的血尿、腎機能障害、超音波検査などにおいて健康診断での異常がみられた場合は、放置せずに泌尿器科を受診しましょう。
監修
しみず巴クリニック 腎臓内科
吉田顕子
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