眼窩骨折がんかこっせつ
最終編集日:2023/3/27
概要
眼窩骨折とは、眼球が入っているくぼんだスペースである眼窩の骨が、目の周囲に強い外力を受けて骨折することをいいます。眼窩骨折の多くは、眼窩内圧の急激な上昇によって眼窩の薄い骨が破れてしまうことで起こり、吹き抜け骨折とも呼ばれています。また、骨折は眼窩の下側、または内側に生じることがほとんどです。
眼窩骨折を生じると、目がへこんでしまう眼球陥凹(かんおう)や、物が二重に見える複視、頰部の知覚障害、吐き気、嘔吐などが生じます。軽症の場合は、保存的治療で経過観察を行いますが、後遺症が残ることもあり、注意が必要です。症状が強い場合は手術による整復を行います。
原因
眼窩骨折の原因は、顔面、おもに目の周囲に打撃や圧力などの外力が加わることで起こります。眼窩骨折の多くを占める吹き抜け骨折では、前方からの強い外力が加わったとき、狭い閉鎖空間で眼窩内圧が上昇し、薄い眼窩骨が破れて、圧力が隣接する副鼻腔に吹き抜けるように骨折を起こします。
ほかにも、外力が眼球を介して眼窩壁に直接加わることや、眼窩骨への外力に対するゆがみ応力として眼窩壁骨折を生じるもの、眼球自体が後方移動して骨折を生じるケースなどが考えられています。
症状
眼窩骨折では、骨折箇所から眼窩内の脂肪組織や、目を動かすための筋肉などがはみ出して、眼球の陥凹や突出、眼球の動きが制限され物が二重に見える複視などが起こります。
ほかにも、鼻出血、結膜下出血、皮下・眼窩内気腫、三叉神経の損傷による知覚障害、眼迷走神経反射による吐き気や嘔吐などが生じることがあります。
検査・診断
眼窩骨折の検査では、まず、視力や眼圧検査、眼底検査などで眼球に異常がないことを確認し、次のような検査を行って診断を確定します。
●眼球運動機能検査(Hess chart、両眼単一視野検査)
眼球運動障害や複視の有無などを調べる。
●Hertel眼球突出計
眼球陥凹、眼球突出の程度を確認する。
●Forced duction test (=traction test)
角膜を引っ張って眼球運動の抵抗をみることで、眼球運動障害、副鼻腔内の嵌頓(かんとん)組織の存在の有無を確認する。
●CT検査
骨折位置や形状、範囲のほか、外眼筋,眼窩内脂肪などの眼窩軟部組織の状態を把握する。
治療
眼窩骨折は、軽症で複視などの症状が生じていない場合は、そのまま保存的治療を行います。けがをしてから2週間経っても症状が改善しない場合は手術を行います。
手術は、内視鏡を挿入して、眼窩内容物を眼窩内へ戻して骨折片を整復します。つづいて、自分の骨や吸収型プレートで骨折部位の被覆・補強を行い、上顎洞内バルーンによる圧迫固定を1週間ほど行います。ほかにも、下眼瞼切開により眼窩の下方から移植骨片や吸収型プレートなどを敷いて固定する方法もあります。
セルフケア
予防
転倒や事故、スポーツなどで目に強い衝撃を受けた後に、視力の低下や視野の異常を感じたら、眼窩骨折だけでなく、外傷による前房出血、強膜破裂、網膜剥離のリスクもあるため、すぐに眼科を受診しましょう。
監修
井上眼科病院 院長
井上賢治
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