大動脈瘤

だいどうみゃくりゅう

最終編集日:2023/5/23

概要

大動脈は、心臓の左心室から出て鎖骨のほうに上がり(上行大動脈)、その後、弓状に下方に方向転換し(弓部大動脈)、胸部(胸部大動脈)、腹部(腹部大動脈)を経て下肢に向かう、からだのなかでもっとも太い血管です。胸部では25~30㎜、腹部では20~25㎜の太さになり、全身に酸素や栄養分を運んでいます。この大動脈の一部が瘤(こぶ)状になるものが大動脈瘤で、50代以上の男性に好発します。


瘤ができる場所、形によって、次のように分類されます。

●部位による分類……大きく、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤の2つに分けられます。胸部よりも腹部のほうが頻度が高く、なかでも多くみられるのが腎動脈下腹部大動脈瘤です。

●形による分類……血管壁が血管を一周する形で拡張する「紡錘状瘤(ぼうすいじょうりゅう)」、一部が瘤状にふくらむ「嚢状瘤(のうじょうりゅう)」に分けられます。

●血管の壁構造による分類……血管内壁は、内側から内膜、中膜、外膜と3層構造になっています。3層構造が保たれたまま瘤状になるものを「真性大動脈瘤」、3層が破れて漏れ出た血液が凝固して周囲の結合組織に覆われて瘤状にふくらんだものを「仮性大動脈瘤」、内膜が破れて内膜と中膜の間に血液が入り、内膜と中膜が剥がれるものを「解離性大動脈瘤(大動脈解離)」と呼びます。

原因

多くは動脈硬化によってひきおこされます。ほかに、家族性・遺伝性、ベーチェット病や高安動脈炎などの炎症疾患、外傷などが原因として挙げられます。リスク因子としては、男性、50代以上、喫煙、高血圧、脂質異常症、家族歴などがわかっています。

症状

大動脈瘤は通常、自覚症状がありません。そのため、人間ドックやほかの疾患の検査で偶然見つかることがほとんどです。

まれに、嗄声(させい)、せき、嚥下障害(胸部大動脈瘤)、腹部の拍動性の腫瘤、腹部膨満(腹部大動脈瘤)がみられることもあります。

検査・診断

多くはX線検査、CT・MRI・超音波(エコー)などの画像検査で偶然発見されます。確定診断には、3D-CT検査が用いられます。

一般的に、血管の正常径の1.5倍以上(短い径が胸部で45㎜以上、腹部で30㎜以上)であるものを大動脈瘤と診断します。

胸部の上行大動脈瘤では、経胸壁心エコーを行うこともあります。

胸部大動脈瘤の約20%に腹部大動脈瘤が、約10%に頭蓋内脳動脈瘤が合併するとされ、併発の有無を調べることも重要です。

治療

大動脈瘤の治療の目的は、瘤の破裂を未然に防ぐことにあります。瘤が破裂すると(大動脈瘤破裂、大動脈瘤解離)、致死率70~90%の命にかかわる事態に陥るからです。

嚢状瘤と仮性大動脈瘤は、大きさにかかわらず手術を検討します。紡錘状瘤は瘤の部位によって異なりますが、径が55㎜以上で、急速な増大(半年で5㎜以上)がみられたら、手術を考慮します。


●手術

人工血管置換術、ステントグラフト内挿術、この2つを組みあわせたハイブリット手術が行われます。人工血管置換術は開胸・開腹手術で、病変部の血管をダクロンという化学繊維でできた人工血管に置き換えます。ステントグラフト内挿術は、太ももの付け根からカテーテルを挿入して経血管的にステントを挿入する、いわば病変部の血管を内側から補強する手術です。低侵襲のため、高齢者などの手術に耐えられる能力が低い場合に検討されますが、瘤のある部位や形状を選ぶため、すべての症例に適応されるわけではありません。


●内科的治療(経過観察)

大動脈瘤を縮小させる投薬などの治療法は現時点ではありません。そのため、手術適応にならない場合は、大動脈瘤破裂のリスク因子を減らす治療と、経過観察を行います。リスク因子軽減の治療として、服薬による高血圧症・脂質異常症の改善、禁煙、生活改善を行い、瘤の大きさや形状にあわせて3カ月、6カ月、1年ごとにCT検査などで経過観察し、急速な増大がみられないかを評価します。

セルフケア

予防

予防には動脈硬化の改善が不可欠です。とくに高血圧、脂質異常症がリスク因子と考えられています。減塩(男性で1日8g未満、女性で7g未満。高血圧の人は6g未満)、禁煙、減量、コレステロールと飽和脂肪酸の摂取を控える、魚・野菜・食物繊維・ビタミン・ミネラルを積極的にとる、バランスのよい食事、節酒、定期的な運動などを実践しましょう。

監修

小田原循環器病院 循環器内科 院長

杉薫

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