肥満症の新薬・ウゴービ(GLP-1 受容体作動薬)の効果

最終編集日:2023/6/26

「最近体重が増えてきた」「ダイエットをしなきゃ」などの会話は、日常でよく耳にします。しかし、ただ太っている「肥満」と「肥満症」では、抱えている問題が異なります。肥満は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI(※)≧25のものが肥満と定義されています。また、肥満症は、肥満によって健康を脅かす病気や合併症になるリスクが高い状態を示します。BMIが25以上で、下記のどれか1つ以上の健康障害に当てはまると肥満症に分類され、医学的に減量を必要とする病態と定義されます。ちなみに、高度肥満は、BMI≧35と定義されています。

※……BMI(体格指数)=体重(㎏) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)


【肥満症の診断に必要な健康障害】

①耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)、②脂質異常症、③高血圧、④高尿酸血症・痛風、⑤冠動脈疾患、⑥脳梗塞・一過性脳虚血発作、⑦非アルコール性脂肪性肝疾患、⑧月経異常・女性不妊、⑨閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、⑩運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節・変形性脊椎症)、⑪肥満関連腎臓病(肥満症診療ガイドライン2022・日本肥満学会)


または、一定以上の内臓脂肪蓄積が認められる。

・内臓脂肪型肥満:ウエスト周りが男性85㎝、女性90㎝以上


●新薬で広がる治療の選択肢


肥満症の治療では、3%以上の減量によって複数の健康障害が改善するといわれており、3%以上の減量目標を設定します。BMIを25以下にするだけでなく、内臓脂肪を減らすことで肥満に関連する疾患を予防することが目標です。

減量のために、まずはライフスタイルの改善が求められます。生活習慣を見直して食行動を修正し、運動を取り入れます。医師や保健師、管理栄養士や運動指導者など、専門職からの支援を受けながら、いかに食事療法と運動療法を継続できるかが鍵となります。


これらを行っても減量目標が未達成の場合、薬物療法や外科療法などを検討します。食欲を抑制する薬、脂肪の吸収を抑制する作用のある薬、エネルギー消費を高めて脂肪の減少を図る代謝促進薬など、患者さんの状態に適した薬を選択します。肥満症治療では、減量は治療の目的ではなく手段であることを意識します。体重の変化だけでなく、健康障害の改善状況について評価することが重要です。


2023年3月、肥満症の治療薬に新しく「ウゴービ」(持続性GLP-1 受容体作動薬)が承認されました。保険診療で使用できるものとしては、30年ぶりの新しい治療薬です。週に1回、皮下注射することで脳の満腹中枢に働きかけ、消化管運動を抑制し、食欲抑制効果が期待できます。ウゴービが適応になるには、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有していること、BMIが27以上で2つ以上の健康障害を有する、もしくは BMIが35以上など、使用にはいくつかの条件があります。注射製剤なので、自分で注射する必要があります。副作用には悪心、嘔吐、便秘、下痢、脈拍の上昇が挙げられます。副作用を軽減するため、低用量から開始し、徐々に増量していきます。


肥満症はただ太っているだけでなく、立派な「病気」です。肥満症の治療の目的は、寿命や健康寿命に加え、生活の質が肥満症によって損なわれるのを防ぐことなので、自身や家族、周囲の人が当てはまるようなら、早期に内科などを受診して治療を始めましょう。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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