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災害避難時のエコノミークラス症候群に要注意

最終編集日:2026/3/9

災害避難時にはさまざまな健康リスクが潜んでいますが、エコノミークラス症候群もその一つです。足にできた血栓が肺に流れ込んで詰まると、胸の痛みや呼吸困難、循環不全などを引き起こし、場合によっては生命に関わる危険な病気になります。発症のサインになる初期症状や、発症を防ぐ方法をぜひ知っておきましょう。


●災害避難時にエコノミークラス症候群が起こりやすい理由

長時間、狭いところで座ったまま過ごしていると足の血液循環が悪くなり、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができやすくなります。これを「深部静脈血栓症」といいます。足にできた血栓は、歩き出したときなどに血管壁からはがれ、血流にのって肺に到達し、肺の血管(肺動脈)を詰まらせることがあります。これを「肺血栓塞栓症」といいます。この一連の病気の総称が「静脈血栓塞栓症」です。かつて、飛行機搭乗時に発生しやすかったことから、一般的にはエコノミークラス症候群と呼ばれるようになりました。

エコノミークラス症候群は、災害時の避難生活でも多く発生しています。避難所生活や車中泊では、狭い空間で長時間同じ姿勢を続けやすく、足の血流が滞りがちになります。ふくらはぎの筋肉には血液を心臓に戻す役割がありますが、動かさないでいるとその働きが弱まることも一因です。また、断水や物資不足で十分な水分を摂取できない、あるいはトイレを我慢するために水分摂取を控えていると体が水分不足に陥り、その結果、血液が濃くなり血栓ができやすくなります。さらに、災害による強いストレスや睡眠不足も体調を乱し、動かない時間が増えることで、エコノミークラス症候群が起こるリスクが高まります。

特に、高齢者、妊娠中や産後の人、肥満の人、高血圧や心臓病、糖尿病などの持病がある人、がんの患者さん、ピル(経口避妊薬)を服用している人などは発症リスクが高い傾向にあります。ただし、災害時には健康な若い人でも発症する可能性があるので、すべての人が注意したい病気です。


●足の痛みやむくみ、はれは重要なサイン

足に血栓ができると、片側の足が痛い、むくむ、はれる、部分的に赤くなるといった症状が現れます。特にふくらはぎ部分の静脈(ひらめ筋静脈など)に血栓ができやすいため、ふくらはぎの痛みを訴える人が多いです。これらは初期症状で、病気の重要なサインです。さらに、足の血栓が肺に到達し、血管を詰まらせると、胸の痛み、呼吸困難による息苦しさや息切れ、動悸などの症状が現れます。なかには、足の症状はほとんどないまま、突然、肺の症状が現れるケースもあります。いずれも、放置すると重症化したり、命を落とす可能性があるため、このような症状が現れたら、すぐに救護所や医療機関を受診する必要があります。

なお、6時間以上足を動かさないでいると発症しやすくなるといわれていますが、発症までの時間は、人によりさまざまです。6時間以上たってすぐに発症する人もいれば、翌日〜数日後に発症する人もいます。


●動く、水分をとるが予防のポイント

エコノミークラス症候群の予防の基本は「動く」と「水分をとる」です。

まず、動くですが、長時間動かないでいると発症しやすくなるので、4〜5時間に1回は立ち上がって歩くようにしましょう。1〜2時間に1回、足首を動かしたり、かかとの上げ下げをしたり、ふくらはぎを軽くもんだりするだけでも血流の改善に効果があるので、これも行いましょう。

水分は少量ずつこまめに摂取することが大切です。アルコールやコーヒーは脱水を招くことがあるので避けます。

医療用の弾性靴下やストッキングを着用すると、足の静脈が圧迫されて血栓ができにくくなりますが、市販の着圧靴下やストッキングも圧力の程度によっては同じような効果が期待できます。


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監修

国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 肺循環科 部長

大郷 剛