Question

エコノミークラス症候群ってどんな病気?

エコノミークラス症候群は日常生活の中でも起きるものなのでしょうか? ふだん寝ている場所が少し狭いのですが、そういうときにも起こり得るものですか? また、どの診療科を訪ねたら検査などをしてもらえますか?

女性/40代

2022/01/28

Answer

エコノミークラス症候群は、飛行機の機内や災害時の避難生活などで指摘されることの多い病気ですが、今回はそれが日常生活でも起こるのか、診療科はどこかというご質問です。


飛行機での移動など狭い空間で同じ姿勢を長時間続けると、脚の血流が悪くなり、静脈の中に血の塊(静脈血栓)ができることがあります。その際、歩行などにより静脈血栓が脚の血管からはがれ、血流によって肺に達し、肺の動脈を詰まらせるのが「エコノミークラス症候群」です。


脚や下腹部の体の深い部分の静脈に血栓ができるのは「深部静脈血栓症」、血栓が肺に飛んで肺の血管を閉塞させてしまうのは「肺血栓塞栓症」、これらをまとめて「静脈血栓塞栓症」と呼びます。エコノミークラス症候群は、肺血栓塞栓症のことです。


静脈に血栓ができる主な危険因子は以下の通りです。

1. 静脈の血管の損傷血管の内側は血管内皮により血液の異物との接触を防いでいますが、血管が傷つくと血管内皮の膜が壊れ、血液が異物と接触して血栓ができます。外傷や骨折などによって血管内皮が損傷したり、カテーテル検査や手術、点滴や輸血目的で管を長期留置する場合などに血栓ができやすくなります。


2. 血流の停滞

脚の静脈の流れは、脚の筋肉の収縮と弛緩によって促進されるため、歩行などによって血液循環はよくなります。長時間の坐位のほか、病気による長期安静時や脳卒中などで脚が麻痺した場合には血栓ができやすくなります。女性は大きな子宮筋腫や妊娠などで、腹部の大きな静脈が圧迫されると血栓ができるリスクが高まります。


3. 血液凝固能の亢進

悪性腫瘍、やけど、脱水などが原因で、血液が固まりやすくなる場合があります。


肺血栓塞栓症で問題となるのは、深い静脈にできる血栓です。皮膚表面の静脈にできた血栓は血管炎などのトラブルの要因にはなりますが、血管から剥がれにくいため、肺血栓塞栓症を起こす心配はほぼありません。


肺血栓塞栓症では、比較的小さい血栓の場合、無症状のこともありますが、ある程度の大きさの血栓が肺動脈に詰まると、突然呼吸困難が生じます。この発作は1回のみのときと複数回起こって悪化することもあります。約半数に胸の痛みがあり、頻脈、頻呼吸などの症状を伴うことも。大きな血栓の場合、血液が途絶え、失神やショックを起こします。


静脈血栓塞栓症の予防は、十分な水分を摂取し、利尿作用のあるアルコールやコーヒーなどの摂取を控えること。つま先やかかとの上げ下げ、足首を動かす、ふくらはぎを軽くもむなど脚(足)をまめに動かすこと。また、軽い体操やストレッチ運動でからだを動かすことです。ベルトなどでからだを締め付けず、ゆったりとした服装を心掛けること。睡眠時に脚を挙上することなどです。


ふだんの生活でも血栓ができるかどうかは、血栓ができやすい病気があるかなどに依るため、個々の検討が必要です。健康で特に先に挙げたような因子のない方は、通常の予防対策を行いましょう。心配なときは循環器系の医師に相談してください。診療科は、循環器内科、心臓血管外科です。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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