「暑熱順化」で暑い夏に備えよう
最終編集日:2025/5/5
暑さにからだが慣れることを「暑熱順化」といいます。春から夏にかけて気温が徐々に上昇すれば、からだもそれに応じて自然と暑さになれていきますが、最近では4月から夏日(最高気温25℃以上)や真夏日(最高気温30℃以上)になることがあり、「からだがついていかない」「熱中症が心配」と感じる人も多いのではないでしょうか。そこで、早めに暑熱順化のトレーニングを行い、暑さに対応できるからだをつくりましょう。
●暑熱順化できていると、熱中症になりにくい
私たちのからだは、暑いと汗をかきます。汗が蒸発することで体内の熱を逃がしたり、皮膚表面の血液量を増やしてからだの表面から熱を逃がしたりして、体温を下げています。これは自律神経の働きによるもので、熱から脳や内臓を守るために備わっている体温調整機能です。
ところが、炎天下や高温の環境下に長時間いたりすると、体温調整機能が崩れて体内に熱がこもって体温が上昇し、熱中症が引き起こされます。特に、からだが暑さに順応できていないと、汗をかきにくく、皮膚の血液量も増えにくいため熱をうまく逃がすことができず、熱中症になりやすいといえます。
逆に、からだが暑熱順化できていると、汗をかきやすく、皮膚の血流量も増えやすいうえ、汗に含まれるナトリウム濃度が低下します。すると、生命維持に必要なナトリウムの喪失を抑えることができ、熱中症になりにくいとされています。
●運動や入浴で汗をかいて暑熱順化トレーニングを
暑熱順化のトレーニングは暑さに慣れるためのものですから、本格的な暑さが訪れる前に無理のない範囲で汗をかくことがポイントです。例えば、下記のような運動や入浴を日常生活の中にとり入れて汗をかくようにします。毎日続けていくと、個人差はありますが、数日から2週間程度で、暑熱順化が進むとされています。
最初は短時間から始め、無理をせずに少しずつ慣らすようにしましょう。汗をかくと水分を失うので、水分補給も大事です。トレーニングの前後には、冷たい水をコップ1杯飲むとよいでしょう。通気性のよい服装で行い、屋外では紫外線対策(帽子や日焼け止め、サングラスなど)も忘れないようにしましょう。暑いときは無理をしないことも大切です。
・ウォーキング/ジョギング
ウォーキングなら30分程度、ジョギングなら15分程度。頻度の目安は週5回。帰宅時にひと駅分歩くのもおすすめ。
・サイクリング
30分程度。頻度は週3回が目安。通勤や買い物に自転車を使うのもおすすめ。
・筋トレ/ストレッチ
30分程度。頻度は週5回〜毎日が目安。適度に汗をかくものがよい。
・入浴
頻度は2日に1回が目安。シャワーですまさず、ぬるめの湯に汗が出るまでゆったりつかるようにする。
●暑熱順化の効果を持続させるためには?
暑熱順化を得ても、永遠に続くものではありません。何もしないと効果が低下することがあるので、運動や入浴などは習慣化して、週に何回か行うように心がけるとよいでしょう。
また、数日涼しいところで過ごしたあとは、暑熱順化の効果が低下してしまいます。長雨のあとや、夏休みを避暑地で過ごしたあとなどは熱中症に要注意です。
監修
臨床教育開発推進機構 理事
三宅康史