子どもの神経性やせ症が増加 ~摂食障害から守るためには?

最終編集日:2023/3/9

コロナ下に「神経性やせ症」と診断される子どもの数が増加し、高止まり傾向にあるといわれています。神経性やせ症とはいわゆる「拒食症」の医学的な呼び方であり、食行動に問題が生じる「摂食障害」の1つです。体重が増えることに強い恐怖心を抱いて食べることを拒否し、少量しか食べられないため体重が著しく減少していきます。女性に多い病気で、男性にもみられます。


●なぜコロナ下に増加?

コロナ下に子どもの拒食症が増加した理由にはさまざまな見解がありますが、大きなきっかけの1つは、緊急事態宣言下の一斉休校があると考えられます。この間に児童虐待なども増加し、学校再開後は肥満、睡眠障害、摂食障害、不登校が増えました。自粛生活による社会的孤立や行動制限は大きなストレスとなり、家族が家の中に拘束され、親と子が向き合う時間が増えることは、けっしていい影響だけではないといえるでしょう。


●ネットとの付き合い方に注意

コロナ下で対人交流が減り、スマホなどのメディアを通して情報が大量かつ、一方的に入ってきてしまうことにより、家庭生活や集団生活の中で育まれる自尊感情が得られず、自信のない子が増えている傾向があります。また、一斉休校や長く続いた外出自粛により、私たちの活動性や生活習慣は悪化し、コロナ太りを注意喚起するメディアメッセージが急増しました。そのような中、子どもは過激で誤った情報に触れる機会が増加してしまいました。

対策としては、SNSを含むインターネットとの付き合い方を、改めて子どもと一緒に考えてみることを提案します。スマホは「親の所有物」であり、貸し出しているという認識を子どもと共有しましょう。さらに、親のルールのもとで使用するというしつけが大切です。そのためには、親自身がしっかりルールを守って使用することが求められます。「しつけ=躾」とは、口先で指示することではなく、親が「美しい身(すがた)」をみせることと考えます。


●摂食障害から子どもを守るために

摂食障害という病気の原因や様子は一人ひとり異なります。

しかし、根底にある共通の病態は「本人の気質や家族背景などの要因により、幼少期から不安や不満など自らの感情を適切に表現(体現)できないまま思春期の手前まで至り、出口として見い出したダイエットで自らの体重をコントロールすること以外に達成感を得られず、他の選択肢をとれなくなった状態」といえます。

子どもは成長過程で2回の反抗期を経験しますが、親はこれを「手のかかる時期」と捉えるのではなく、自我がしっかり芽生えて心が成長している、大切な自己主張期と前向きに受け止められる、親の理解と余裕が必要だと考えます。

親の安定した関わりにより、家庭内で安心感を得ることは、摂食障害だけでなくメンタルヘルスの基盤となります。


●食事の大切さを再認識

大人のダイエットは成長期である子どもには向いていません。

まずは、思春期に必要な摂取エネルギー量を、子どもへ正確に伝えましょう。学校給食の1食が800〜900kcalであることは、妥当であるという認識を与え、この量を食べても太らないこと、健やかな成長のため必要な量であることをくり返し伝えることが大切です。そして、子どもと一緒に買い物や料理をして、食卓を囲んで食べることで会話の機会を増やしましょう。食卓は、親が子どもの様子をうかがい、子どもは親に何気なく相談できる場でもあります。食事はコミュニケーションであることを忘れてはいけません。

子どもの食欲や体重の変化などが心配になったときは、深刻な状態になる前に内科、小児科などのかかりつけ医を受診して、親子の信頼関係を築くことからはじめましょう。

監修

福島県立医科大学 小児科

鈴木雄一

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