腫れや痛みはないが歯周病と診断された

歯と歯ぐき(歯肉)の間には健康な場合、約1㎜の溝があります。これを歯肉溝と言います。歯肉やその深部の組織に炎症が起こると歯肉が腫れ、この溝が深くなります。これを仮性ポケットといい、歯肉炎の状態です。歯肉炎は丁寧に歯磨きをすると治りますが、歯肉炎のまま放っておくと、歯を支える骨も溶けて歯周炎という状態になります。この時、歯に付着している歯肉の部分が徐々に剥がれ、付着していた位置が徐々に歯の根の先のほうへ変化していきます。

こうしてでき上がった歯と歯肉の間の深い溝のことを歯周ポケットといいます。歯周ポケットの深さが4㎜以上になると重症です。歯肉から出血したり、うみが出たりすることもあります。今回の場合は、歯科で適切な歯周病の診断と治療を受けることが必要と思われます。

歯周病の治療で最も大事なのは、歯に付着するプラーク(歯垢)を日常のブラッシングで除去することです。「ブラッシング」というプラークを除去する行為は、歯周病治療の中心です。歯科で毎日プラークを除去してもらうのは無理なので、正しいブラッシング方法を習得し、日常的に治療の一環としてプラークを除去する必要があります。一般的には、プラークコントロールレコードというスコアが20％未満になることを目指し、それが達成できてから歯石除去などの治療を行います。その際に歯周病の程度、リスク、ブラッシングの状況などに応じて目標は異なります。

基本治療で、一部のポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病が進行した状態には、外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。また、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨を再生させる手術(再生療法)を行う場合もあります。手術はそれぞれの病態に合った方法が適応されます。

歯周病を悪化させる原因は歯垢だけでなく、喫煙や糖尿病などいろいろあり、歯科で行う専門的な「プロフェッショナル・ケア」を中心に、歯周病の原因を１つひとつ取り除くことが大切です。

歯周病は歯と歯の間から進行することが多いものの、歯と歯の間は歯ブラシだけでは磨ききれません。そのため、歯ブラシに加え、デンタルフロスや歯間ブラシの使用が必要です。歯周病が進行している場合は、歯と歯の間が広くなっていることが多く、フロスよりも歯間ブラシが有効となります。いずれの場合も、使用方法を間違えると歯肉を傷つけたり退縮させたりするため、歯科でご自分に合ったブラッシング方法の指導を受けることをおすすめします。