Question

乳幼児に注射をしなければならない場合

大腿四頭筋拘縮症など、赤ちゃんへの注射の恐ろしさを聞きますが、乳幼児にどうしてもしなければいけないというのは、どういう場合ですか。(6か月|男児)

女性/30代

2021/12/21

Answer

ご質問の通り、乳幼児への注射はなるべく避けたいのは当然です。しかし、どうしても注射でないと目的を達成できないこともあります。その場合は、注射によってもたらされる利益と不利益(害)を考えて、判断することになります。注射による害の中では、痛みはどのような注射でも避けられません。しかし、長期にわたる害を考える場合には、注射経路と使用薬剤によって事情がだいぶ異なります。ご質問にある大腿四頭筋拘縮症は、抗生物質などの注射薬を乳幼児の大腿前面に筋肉注射(筋注)した結果、大腿四頭筋が固く縮むために伸びなくなって、正座ができない、といった後遺症を多くの子どもたちに残したことで、30~40年前によく知られるようになりました。この副反応は筋注の場合にのみ現れる可能性があるものですが、それだけではなく用いる注射薬の酸性度(pH)や滲透圧(溶けている物質の濃さ)に大きく依存することがわかっています。現在では、筋注用として承認された薬剤では、そのような副反応の危険はきわめて低くなっています。日本では大腿四頭筋拘縮症といった不幸な歴史があったために、現在でも年輩の人たちを中心に、筋注の恐ろしさの記憶が残っていますが、世界的にみると、乳幼児に対する筋注は特別に危険なものとは考えられていません。今後は、国際的に開発される薬剤を含めて、いろいろな注射薬が筋注で投与される機会が増えてゆくものと思われます。乳幼児で注射を受ける機会が最も多いのはワクチンですが、現時点でほとんどが皮下注射によって投与されます。局所の発赤や腫れは珍しくありませんが、容認できる範囲と考えられています。また、何かの病気で注射が必要になる場合で最も数が多いのは、静脈から投与される輸液(点滴)だと思います。どうしても飲ませられない場合や下痢や嘔吐が激しい場合、あるいはすでに脱水症が進んでいる場合などでは、他によい方法がないので、点滴を受けることがすすめられます。

回答者

福島県立医科大学 甲状腺・内分泌センター センター長

横谷 進

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