Question

子どものトラウマをどう解消してあげるか

3歳の男児の母親です。先日、近所の公園で保育園の友だちと遊んでいるとき、公園の隣に住んでいる70代ぐらいの男性に「うるさい」と怒鳴られました。少し理不尽に感じつつも親たちが謝ってその場は収まったのですが、以来、子どもは年配の男性を見ると泣き出したり、私の陰に隠れて震えていたり、ひどいときはおもらしをしてしまいます。怒鳴られたことがトラウマになっているようで、この状態がもう3カ月ぐらい続いています。親として、どのように心のケアをしていくべきでしょうか。

女性/30代

2021/12/21

Answer

年配男性を見るたびに泣き出すことが3カ月も続いていること等からみて、おっしゃるとおりトラウマになっているようです。トラウマというのは、その出来事がおきたときの感覚、感情、思考がまるごと冷凍保存されたようなものと、よく比喩的に言われます。その冷凍保存が、似たような状況(ここでは年輩男性を見ること)が引き金となって解凍され、当時の出来事が“今”“ここ”のことのように再体験(フラッシュバック)されます。お子さんも、怒鳴られたときの恐怖を何度も再体験しているようで、何とかケアしてあげたいものです。トラウマのケアにはさまざまな方法があります。そのなかで家庭でもできるケア、それも気持ちを言葉で表現できない3歳のお子さんにもできるものをいくつか紹介してみたいと思います。


ただ、その前に、お子さんが怒鳴られたとき、もしかしたら、あなたも謝るのに精一杯で、お子さんの気持ちに寄り添えなかった、ということはないでしょうか。思い当たるようでしたら、今からでも「突然、怒鳴られて怖かったよね」などと声をかけてあげるとよいでしょう。このように接することで、はじめて「泣く」「震える」といった、目に見える表現の下にある恐怖心がケアされることになります。


さて、トラウマケアにおいて最初にやるべきことは“安全および安心感の確保”です。「守られている」とか「安全な所にいる」と感じられる日々を過ごすことは、本来とても大切なプロセスで、小さなトラウマであればたいていは自然に収まっていくものです。

では実際に、お子さんがまた年配男性に会って泣き出したときの対処について考えてみましょう。そのような状況になったら、まずは穏やかな声でお子さんの名前を呼び、「もう終わったんだよ」「今は安全なんだよ」などと話しかけます。怖い体験を思い出している状態から“安全である現実”に戻ってきてもらうイメージで声かけするのがカギです。同様の意味をもつ行いとして、例えば足踏みしてもらうことなども効果的なことが多いです。足踏みすることで“今ここにいる感覚”つまり“自分が自分である”という感覚が戻ってくるのです。


最後に、日常生活での過ごし方についても少しお話ししておきます。前述のような、パニックになった際の対処以外に、日々の生活の中でもちょっとした工夫ができます。例えば、ジュースを飲むときなどに2種類のジュースを用意して、「どっちにする?」と語りかけて、お子さんに選択してもらいます。トラウマ記憶というのは、自分ではコントロールできない圧倒的なものに一方的に侵害されたときに生じます。つまり、「自分では何もできなかった」という自己無力感が必然的に伴います。ですから、選択することによって「自分で状況をコントロールしている!」という感覚を少しずつ取り戻していくわけです。


少し難しい説明も入りましたが、よかったら試してみてください。ただ、どうにも手に負えないなと思われたら、やはりトラウマ対処を専門とする医療機関や相談機関を訪れることをおすすめします。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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