うつ病で療養する妻への接し方

うつ病などのメンタル疾患は、ほかの病気やけがと異なり様子がわかりづらく、周囲の方はどのように接していけばよいかとても悩まれると思います。あなたの場合はご一緒に暮らす奥様のことですから、あなた自身も気が重くなり、ご心配も多いこととお察しします。

まず、うつ病の療養についてですが、回復のためには十分な休養、治療と服薬、そして安心して過ごせる環境作りが大切です。奥様はすでに診断を受け治療を受けておられるご様子ですから、ご家族としては、奥様が定期的な通院を続け、処方されたお薬をきちんと飲んでいるか、そして無理のない安心した環境で療養できているかを見守ることが第一歩になります。また、お食事や睡眠がきちんととれているかというところも、ご家族ならでは見守りのポイントです。治療を開始してから数週間から1カ月くらいの間は、お薬の影響で眠気や吐き気などが生じることもあり、生活リズムも乱れがちです。身の回りのことがご自身でできるくらいにまで回復できたら、朝は同じ時間に起きて朝食を一緒に食べるようにして、奥様が生活リズムを整えていけるようサポートするのもひとつです。

接し方については、よく「うつ病の人にがんばれと励ましてはいけない」と言われます。それは、うつ病の症状に、自分を価値のない人間だと考えたりする「自尊心の低下」や、なんでも悪い方向にとらえてしまう「マイナス思考」があるからです。こうした状態のときは、周囲からの「がんばれ」という励ましが、逆に「自分のがんばりがたりない」と受け取られてしまう可能性があるのです。奥様が「悲しい」「つらい」と涙を流される時は、隣に座って「そうなんだね」とじっと話を聞いてあげてください。「あなたは何も言ってくれない」「あなたにはわからない」と言われたら、心配していることや、一緒に回復を目指していこうと思っていることをしっかり伝えましょう。

そしていちばん大切なことは、あなた自身が健康な暮らしを送ることです。奥様とご一緒に過ごす時間が多いことで、笑うことや楽しむことがどうしても少なくなると思います。奥様と同じように暗い表情ばかりしていますと、あなた自身の気持ちも曇りがちになります。奥様を支える気持ちは大事にしつつ、ご自身のストレス解消の時間も、どうぞ忘れないでください。家が散らかったり洗濯物が溜まったりと、イライラすることもあるかもしれませんが、後でもできることは後回しにして、気持ちを楽に過ごす工夫をしてみてください。「～しなければならない」と思わずに「まあ、いいか」とご自身と奥様に言い聞かせて、あせらずゆっくり療養生活を送れることを願っています。