疥癬かいせん
最終編集日:2022/8/29
概要
疥癬は、ダニの一種で大きさが0.5mm未満の小さいヒゼンダニが肌に寄生することで発症します。激しいかゆみを伴い、直接的な接触、あるいは衣類やリネン類など肌に触れるものを介して感染する感染症です。
「通常疥癬」と「角化型疥癬」の2種類があり、治療にはヒゼンダニを殺す飲み薬や外用薬を使います。
原因
ヒゼンダニというダニが、肌の表面の角質層に寄生し、発症します。人から人への感染は、肌と肌が触れ合うことによりヒゼンダニが移動することで起こります。
おもに2種類ある疥癬のうち、重症型である角化型疥癬は、通常疥癬(数十匹以下)にくらべ、100~200万匹と桁違いにヒゼンダニの数が多く、そのため感染力も強くなります。短時間の接触や床に落ちた感染者のフケ、感染者が使用した衣類や寝具などを通じた間接的な接触によっても感染します。
症状
症状から通常疥癬と角化型疥癬に分けられます。
●通常疥癬
ヒゼンダニのメスが卵を産みつけるためにつくった疥癬トンネル(白っぽい筋)と赤いブツブツとした丘疹が生じることが特徴です。これらの発疹は手のひらや指の間にとくに多く、ほかには手首や足、腹や胸、腕などにもみられます。かゆみがとくに夜間に強くなるため、睡眠の妨げになる場合もあります。
また、男性は外陰部に数mm程度のしこり(結節)ができるのも特徴的です。
●角化型疥癬
手、足、尻、肘、ひざ、爪、そして頭部や耳、顔などほぼ全身に、灰色から黄白色のザラザラとした分厚い角質が生じ、見た目にはあかが厚く積もったような状態になります。通常疥癬では頭部や顔回りには症状は起こりません。夜間の強いかゆみのために眠れなくなることがあります。
検査・診断
ヒゼンダニが掘った疥癬トンネルがあるかどうかなどの視診や疥癬患者さんとの接触やかゆみの有無を確かめる問診などによって診断します。さらに、角質を採取し、顕微鏡でヒゼンダニの虫体や虫卵を確認したり、ダーモスコピー検査(ライト付きの拡大鏡)で虫体や疥癬トンネルを確認したりしながら診断します。
治療
ヒゼンダニを殺すための内服薬や、外用薬(塗り薬)を用います。治療後1週間おきに2回連続してヒゼンダニを検出できず、特徴的な皮疹が出現しない場合に治癒と判断します。
塗り薬は週1回、症状が出てない部分も含め、首から下の全身にくまなく塗る必要があります。耳の裏、わきの下、手足の指の間や股間も忘れずに塗ります。飲み薬は週1回服用します。これらの飲み薬や塗り薬は経過しだいでは何回かくり返すこともあります。通常疥癬であれば1カ月程度、角化型疥癬であれば2カ月程度で快方へ向かいます。かゆみはヒゼンダニの虫体、糞、脱皮殻に対するアレルギー反応で抗ヒスタミン薬の飲み薬を用いて対処します。疥癬が治癒した後もかゆみだけが続くことがあります。
家庭内に疥癬の患者さんがいる場合、同居の家族にも検査や予防的な治療を行うことがあります。
セルフケア
療養中
●通常疥癬の場合
・長時間、ほかの人と肌と肌を接触させないようにしましょう。隔離は必須ではありません。
・寝具や衣類、タオルなど肌に直接触れるものの共用は避けましょう。
●角化型疥癬の場合
・感染力が強いため、ほかの人との接触やものの共用を避けたうえで、隔離が必要です。
・衣類、リネン類は毎日交換のうえ、50℃以上の湯に10分以上浸した後に洗濯をする、または密閉してピレスロイド系殺虫剤を噴霧してから洗濯機、乾燥機に入れるなどの対策をとりましょう。
・寝具、マットなどは掃除機や粘着シートなどで表面を丁寧に掃除しましょう。
予防
・手洗いの励行、毎日の入浴、シャワーでからだを清潔に保ちましょう
・室内はこまめに掃除機をかけましょう
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑慎司
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