特発性大腿骨頭壊死症

とくはつせいだいたいこっとうえししょう

最終編集日:2023/7/28

概要

大腿骨の上端にある丸い骨が大腿骨頭です。骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)という部分にはまり、股関節を形成しています。大腿骨頭の血流が低下して壊死(骨組織が死んだ状態になる)してしまう病気が大腿骨頭壊死症です。原因が不明なものを「特発性」、他疾患など血流低下の原因が特定できるものを「症候性」と呼んでいます。症候性の原因として、股関節の外傷、血管の塞栓症などが挙げられます。厚生労働省の指定難病となっており、1年間の新規患者は2000~3000人、好発年齢は30~50代で、男女比は1.5対1とされています。

原因

特発性の場合、骨頭への血流が減少する原因は不明ですが、ステロイドの治療歴や、過度の飲酒、喫煙が発症に影響すると考えられています。患者さんのうち、約50%にステロイド治療歴が、約30%に過度のアルコール飲酒歴がみられるという報告もあります。

症状

骨に壊死が起きた時点(発生時)では、症状はありません。壊死した部分がもろくなり、日常生活の動作で潰れる(圧潰)と、痛みが生じます(発症)。発生から発症まで、半年から数年程度の時間差があります。

症状として比較的急激に股関節の痛み、跛行(はこう:足を引きずって歩く)が現れます。腰痛、ひざの痛み、臀部(でんぶ)の痛み、太ももの前面の痛みなど、股関節と離れた部分から症状が現れることもあるため、診断までに時間を要することも少なくありません。また、初期には安静によって痛みが消失することがありますが、壊死部の圧壊が進行すると再び痛みが出現します。

検査・診断

X線・MRI検査、骨シンチグラフィ、骨生検(骨の組織をとって調べる)が行われます。

おもに壊死の範囲の広がりによって、タイプA~Cに分けられます(Cにいくにしたがって広い範囲になる)。また、進行(病期)によって、ステージ1~4に分けられます。


●ステージ1:MRI検査、骨シンチグラフィで異常所見(異常な点)を認める

●ステージ2:X線検査で大腿骨頭周辺の骨が帯状に硬化しているのが認められるが、大腿骨頭の圧潰はない

●ステージ3:大腿骨頭に圧潰の部分がある。関節裂隙(関節と関節のすきま)は保たれている。圧潰が3㎜未満はステージ3A、3㎜以上はステージ3Bとされる

●ステージ4:明らかな関節症のような変化が認められる

治療

大腿骨頭壊死症の治療は手術が基本になります。しかし、発生のみで症状がみられない時期には、保存療法が行われます。疼痛に対して消炎鎮痛薬を用いて、股関節にできるだけ負担をかけない生活(杖などを使う、長距離の歩行や階段の昇降は控える、重い物を持たないなど)を送るようにします。

多くは、保存療法で進行を抑えることはできないため、最適のタイミングを捉えて、手術を行います。また、すでに発症している場合には、手術が第一選択となります。手術には関節温存術と、股関節全置換術があります。


●関節温存術

大腿骨の近位部を骨切りして大腿骨の形状を変化させ、大腿骨頭の健康な部分に体重がのるようにする手術です。比較的若年で大腿骨頭の健常な部分が3分の1以上残っている場合に適応されます。大腿骨内反骨切り術、大腿骨頭回転骨切り術などの手法があります。


●股関節全置換術

ステージ3A以降で選択される手術として、大腿骨側を置換する「人工骨頭置換」と、大腿骨側と寛骨臼側どちらも置換する「股関節全置換術」があります。人工骨頭置換では、10~15年ほど経過すると人工骨頭が骨盤に潜り込み、再発するリスクがあるため、最近は股関節全置換術が選択されることが多いようです。

セルフケア

予防

特発性大腿骨頭壊死症は、30~50代の働く世代にみられる股関節の疾患です。これらの年代では、できるだけ股関節を温存できる骨切り術が望ましいとされています。骨頭の圧壊が大きくなると骨切り術はむずかしくなるので、早期診断が重要です。股関節痛が出現したら、疼痛が一時的であっても、医療機関で検査を受けましょう。

監修

東馬込しば整形外科 院長

柴 伸昌

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