後天性免疫不全症候群(AIDS)
こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん

最終編集日:2022/3/30

概要

後天性免疫不全症候群は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで発症する免疫不全の病気です。ヒト免疫不全ウイルス感染症の無症候期と定義される時期の後に生じてくる免疫不全に伴うさまざまな病態の総称で、日本で通称「エイズ」と呼ばれています。免疫不全に陥ると、健康な人では発症しない日和見感染症(ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫など)や悪性腫瘍をひき起こし、適切な治療を行わないと重篤な結果をもたらします。

原因

原因はヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染です。おもな感染経路は性交渉で、患者さんの精液や腟分泌液に含まれるウイルスが、粘膜接触で感染します。ほかにも妊娠中や分娩時、母乳による母子感染、針刺し事故や注射器の共用などによる感染も起こります。

症状

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染すると、初期には発熱、のどの痛み、筋肉痛、倦怠感などインフルエンザのような症状が出ることがあります。初期症状は数週間で治まり、その後は症状がない「無症候期」がつづきますが、この間にもHIVはゆっくりと増殖しています。「無症候期」は数年から10年以上と個人差がありますが、ウイルスの増殖が進むと免疫機能が低下し、後天性免疫不全症候群(AIDS)という病態になり、健康な人なら通常かかりにくいニューモシスチス肺炎やカポジ肉腫などの日和見感染症を発症します。さらに症状が脳へ進むとHIV脳症を発症するなど、日常生活を送ることがむずかしくなり、徐々に重篤な状態になっていきます。

検査・診断

血液検査によって行われるスクリーニング検査(酵素免疫抗体法やゼラチン粒子凝集法など)で、HIV抗体が検出されると陽性となります。確定診断には、ウイルスの遺伝子を検出するウエスタン・ブロット法とPCR法が同時に用いられます。

日本の感染症法では五類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。


治療

現在、後天性免疫不全症候群を完全に治す薬はまだなく、ウイルスの増殖を抑制して病気の進行を抑え、「無症候期」をできるだけ延長させる目的の抗ウイルス薬治療が主体となります。近年、さまざまな抗HIV薬が開発され、複数の薬を同時に使う多剤併用療法が大きな成果をあげ、生命予後を飛躍的に改善しています。免疫不全に伴い生じた肺炎などの感染症や腫瘍などに対しては、それぞれに応じた治療法が選択されます。



セルフケア

予防

後天性免疫不全症候群をひき起こすHIV感染症のおもな感染経路は性交渉であることから、不特定の人との性交渉は避け、性的接触の際には避妊具(コンドーム)を正しく使用することが大切です。

また、カミソリや歯ブラシ、ピアスの共用や注射器の回し打ちなども感染原因になりますので絶対にしてはいけません。母子感染では、早期に感染の有無が確認できれば、出産前後の適切な医療により、子どもへの感染リスクを低下させることができます。


監修

寺下医学事務所 医学博士

寺下謙三

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