光線過敏症/日光過敏症こうせんかびんしょう にっこうかびんしょう
最終編集日:2025/3/14
概要
光線が当たると皮膚に過剰な反応が現れる病気を「光線(日光)過敏症」といいます。健康な人の皮膚では反応が起こらないほどの弱い光線に対しても、症状が現れます。
私たちが浴びる太陽光線には可視光線(目で見える)、紫外線(目で見えない、UVAとUVBがある)があります。光線過敏症にはいくつかのタイプがあり、過剰反応を起こす光線の種類や発症までの時間、治療法が異なります。おもに、多形日光疹、日光じんましん、慢性光線性皮膚炎、薬剤性光線過敏症(光線過敏型薬疹)、光接触皮膚炎、種痘様水疱症、皮膚ポルフィリン症、色素性乾皮症などに分けられます。
種痘様水疱症はEBウイルス感染が原因となる小児特有の病気です。薬剤が原因のものは、高齢者に多くみられます。多形日光疹は最も頻度が高く、女性の約5%にみられるといわれます。
原因
大きくは、内因性と外因性があります。
●内因性……遺伝子の異常や、代謝疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染症、栄養素の欠乏などが原因で発症します。皮膚ポルフィリン症、色素性乾皮症は遺伝子の異常が原因で、どちらも厚生労働省の指定難病となっています。種痘様水疱症は幼少期のEBウイルス感染に関連した病気です。ビタミンB3(ナイアシン)が欠乏するペラグラという病気でも、光線過敏症が起きます。慢性光線性皮膚炎のなかには、HIV感染や成人T細胞白血病/リンパ腫が関与するものもあります。多形日光疹と日光じんましんも内因性のものですが、原因はわかっていません。
●外因性……食品、薬剤(内服薬や貼り薬・軟膏など)、化粧品などが引き金となって発症します。薬剤性光線過敏症、光接触皮膚炎がこれにあたります。とくに服用薬が多い高齢者では、薬剤性光線過敏症のリスクが高くなります。
症状
日光や光線が当たる部分に、発赤、紅斑、丘疹(わずかに盛り上がった皮疹)、水疱、色素沈着などが現れ、皮がむけることもあります。慢性光線性皮膚炎では皮膚が分厚くごわごわになります(苔癬化)。
痛みやかゆみを伴い、屋内でのガラス越しの日光に対しても、また、衣服などで皮膚を覆っていても症状が現れることがあります。
日光じんましんは、数時間程度で消失することもありますが、長時間日光に当たり続けると、重症例では呼吸困難や意識消失を起こすことがあります。
検査・診断
光線過敏テストを行って、原因が光線であることを確定します。人工光源を用いた光線(紫外線UVB、紫外線UVA、可視光線)を背中に照射し、反応を調べます。外因性の場合は原因物質を背中の皮膚に貼付し、取り去ったあとに光線を当てて反応をみる「光パッチテスト」が行われます。通常、24時間後、48時間後に判定し、診断の確実性を上げるために、複数回行います。「内服照射試験」では、薬を内服したあとに光線を照射します。
適切な治療を行うためには、光線過敏症の原因を特定することが重要になります。原因となる病気が隠れていないか、遺伝性の病気ではないかなどが精査されます。
治療
遮光が治療の基本となります。
サンスクリーン剤の使用、長袖の着衣、外出時の帽子・サングラス・日傘などで光線が当たるのを避け、紫外線の強い時間帯は外出を避けるようにします。可視光線とUVAは窓ガラスを通過するため、室内でもガラス越しの日光に当たらないように留意します。
外因性の場合は、特定された原因物質の使用を中止します。
並行して、薬物療法が行われます。炎症を抑えるステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬の内服、症状が強い場合や難治性の場合はステロイドの内服薬や免疫抑制薬を用いることもあります。
内因性の場合は、原因疾患の治療・コントロールが重要です。
セルフケア
療養中
光線過敏症はさまざまな原因でひきおこされます。通常の日焼けより症状が強いような場合には、早めに皮膚科を受診しましょう。
光線過敏症と診断されたら、何よりも日光を避けることを心がけます。光線過敏症の多くは慢性疾患であるため、治療には根気が必要です。
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑 慎司