筋性斜頸きんせいしゃけい
最終編集日:2025/3/10
概要
斜頸とは、何らかの原因があって首が傾いた状態になることを指します。新生児や小児に発症し、筋性斜頸、骨性斜頸、麻痺性斜頸、眼性斜頸など、原因によってさまざまなタイプに分けられます。
筋性斜頸は、首の両側にあって鎖骨から頭蓋骨(後頭部)に伸びる「胸鎖乳突筋」という筋肉の、片側の拘縮(硬くこわばる)が原因で頭が傾きます。
約90%で1歳半くらいまでに自然治癒しますが、その後も改善がみられない場合、5歳くらいまでに治療しないと、顔面の非対称などが後遺症として残るとされています。
男児と女児に発症差はなく、発育性股関節形成不全などの股関節の病気を合併することもあります。
原因
胎内で不自然な姿勢でいることで拘縮した胸鎖乳突筋が、分娩時に引き伸ばされることで損傷して起こると考えられています。
症状
首が拘縮のあるほうに傾き、健康な側に顔を向ける状態が続きます。
乳児健診で頸部の腫瘤(こわばって硬くなった部分)や可動域が制限されていることを指摘されて気づくことが多いようです。また、沐浴時などに頸部の腫瘤に気づくこともあります。筋肉の緊張が強いだけで、腫瘤を触れない場合もあります。
検査・診断
視診と頸部の触診から診断がつけられます。腫瘤の大きさ、胸鎖乳突筋の状態、可動域を調べるとともに、肩や顔面、後頭部などに変形や異常がないか、合併しやすい股関節の異常がないかも確認します。
超音波検査やX線検査でほかのタイプの斜頸などとの鑑別を行います。
治療
頸部の腫瘤は生後数週間で最も大きくなります。しかし、約90%のケースで、1歳半くらいまでに自然治癒します。
首や顔の傾きの改善法として、筋性斜頸のある側から呼びかける・テレビや玩具などの音の刺激を与える、筋性斜頸のある側に添い寝するなどが有効とされています。
3歳を過ぎても改善されない場合には、拘縮を起こしている胸鎖乳突筋を切離する手術が検討されます。術後は再発予防のための装具を着け、ストレッチなどのリハビリテーションを行います。治療期間は1年程度とされています。
セルフケア
療養中
赤ちゃんの首や顔の傾き、頸部のしこりに気づいたら、乳児健診の際に、あるいは小児整形外科を受診して相談しましょう。
以前は拘縮した部分のマッサージやストレッチが行われていましたが、ほとんどが自然治癒することから、現在では推奨されていません。
焦らずに経過を見守りましょう。
予防
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴 伸昌