若者の市販薬乱用(オーバードーズ)の増加と対策
最終編集日:2023/9/7
市販薬の過剰摂取をオーバードーズ(略してOD)といい、10代、20代の若者たちの間に広がっています。なぜそのようなことが起きているのか、解説します。
●若者の薬物使用で一番多いのは市販薬
10代の薬物使用といえば、以前は覚醒剤や大麻、危険ドラッグが多かったのですが、2016年以降、市販薬が一気に増え、2022年には薬物使用の65%を市販薬が占めるまでになっています。使われる市販薬は、せき止めやかぜ薬など、手軽に購入できる一般的な薬です。
なぜ市販薬が違法薬物のように使用されているのかというと、せき止めやかぜ薬などの市販薬には麻薬や覚醒剤と同じような成分がごく少量含まれているものがあるからです。そのため、一度に何十錠も服用することで、一時的に「頭がスッキリする」「嫌なことを忘れて多幸感が得られる」「気分が落ち着く」「疲労感がなくなる」などの作用が現れることがあります。これを求めて若者がオーバードーズに陥ってしまうのです。「どの市販薬をどれくらい服用するといいか」といった具体的な情報が、口コミやSNS(インターネットの会員交流サービス)などで飛び交っています。
●市販薬といえども依存症に陥り、健康を害することも
オーバードーズには健康上の大きな問題があります。大量の薬を飲み続けているとからだが薬に慣れてしまい、求める効果を得づらくなって服用量がさらに増えていきます。「もうやめよう」と中断すると、気持ちが落ち込んだり、体調が悪くなったりすることもあり、服用を続けるしかなくなります。市販薬といえども、依存症に陥るリスクが大きいのです。そうなると、薬の影響で肝臓や腎臓に障害が起こったり、最悪の場合は呼吸や心臓が停止して死亡したりするケースもあります。
●子どものオーバードーズに気づいたら専門機関に相談を
市販薬の乱用は、10代の女子を中心に増加しています。非行とは無縁の真面目な女子高校生が、オーバードーズに陥るケースがとても多いといいます。背景には、家庭や学校で感じている「つらい気持ち」があり、それを和らげるために市販薬に頼ってしまうのではと考えられます。いじめや虐待、親との関係が悪い、学校での孤立など、深刻な問題が潜んでいる場合もあります。
では、子どもがオーバードーズに陥ったとき、親はどうしたらいいかですが、叱っても問題解決にはつながりません。本人が何に悩んでいるのかを探り、一緒につらい気持ちに向き合う姿勢を示すことが必要です。時間をかけ、少しずつ薬を減らす方向にもっていけるようにするとよいものの、自分たちだけで解決しようとしてうまくいかず、こじれてしまうこともあります。まず医療機関や精神保健福祉センター、保健所などに相談し、専門家のアドバイスを得ることが大事です。
監修
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
松本俊彦
この傷病に関連したQ&A
関連するキーワード
みんなの
歩数ゲームやデイリーアドバイス、無料健康相談※が利用可能
※ご所属先が本サービスを契約いただいている場合のみご利用いただけます。