男性・閉経後の女性の「貧血」に潜む怖い病気
最終編集日:2026/5/18
貧血は、よくある体の不調として軽視されがちですが、男性や閉経後の女性の場合は、貧血の陰に別の重大な病気が隠れている可能性を考える必要があります。例えば、原因のひとつとして、「がんによる慢性的な出血が貧血の原因」となることもあります。
●貧血には「鉄欠乏性貧血」と「慢性疾患に伴う貧血」がある
貧血とは、血液中の赤血球の中のヘモグロビンが減少し、全身に十分な酸素を運べなくなっている状態です。ヘモグロビンは、鉄を含み、酸素を運ぶ役割を担うたんぱく質です。
貧血の原因には、栄養不足やさまざまな病気などがあります。女性は、月経によって毎月出血が起こるため貧血になりやすく、その場合は閉経を境に貧血が改善されることが多いです。一方で、男性や閉経後の女性に貧血がみられる場合には、その背景に病気が潜んでいる可能性を考えなくてはなりません。
病気を背景にして起こる貧血には、「鉄欠乏性貧血」のほか、「慢性疾患に伴う貧血」(慢性炎症に伴う貧血、炎症性貧血とも呼ばれる)があります。
・鉄欠乏性貧血:体内の鉄が足りなくて起こります。鉄の摂取・吸収不足のほか、胃や腸など消化管からの少量の出血が長期間続くことで、貧血が起こることもあります。
・慢性疾患に伴う貧血:鉄をうまく利用できなくなることで起こります。病気による炎症によって、「腸から鉄を吸収しにくくなる」「体の中の鉄が血液中に放出されにくくなる」「赤血球をつくるスピードが落ちる」などの「鉄利用障害」が生じて貧血が起こります。
このため、どのタイプの貧血なのかを見極めながら、原因となっている病気を調べることが重要です。
●ただの貧血かと思っていたら、がんだった場合も
貧血は、出血や炎症を伴うさまざまな病気によって起こりますが、なかでも特に注意したいのが「がん」です。治療前のがん患者の44%で貧血がみられたという報告があるほど、がんと貧血は関連があります。
例えば、消化器のがんは血便が出て気づくこともありますが、血便が出る前に貧血が見つかり、検査をしたら大腸がんだったというケースも少なくありません。そのため、健診などで貧血と指摘された場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診して精密検査を受けましょう。
●貧血が判明した後の精密検査の内容は?
精密検査では、鉄欠乏性貧血なのか、あるいは慢性疾患に伴う貧血なのかを調べるため、赤血球のサイズ(MCV)、赤血球血色素濃度(MCHC)、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、血清フェリチンなどを調べます。炎症が起きると増加するたんぱく質「CRP」の検査も不可欠です。
さらに、消化管のがんが疑われる場合には、便に血液が混じっていないかを調べる「便潜血検査」、食道や胃・十二指腸の中を調べる「上部消化管内視鏡検査」、大腸の中を調べる「大腸内視鏡検査」などを行って、がんやポリープなどがないか、チェックします。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も行われます。
検査の結果、がんなどが見つかった場合は、その治療を始めますが、原因となる病気を治療することで、貧血の改善も期待できます。必要に応じて造血を助ける薬や鉄剤を使うこともあります。
貧血をきっかけに検査を受けることで、症状が出る前のがんが見つかることもあります。健診で貧血を指摘された場合は、軽視せず、きちんと検査を受けるようにしましょう。
監修
県立広島病院 臨床腫瘍科 部長
山内理海