卵巣がんの増加で注目されている経腟超音波検査

最終編集日:2025/11/24

卵巣がんの患者数は増加傾向にあり、2021年に卵巣がんと診断された人の数は13,456人※です。一方、卵巣がんで亡くなる人の数は年間約5,000人と、女性のがんの中でも死亡率の高いがんです。初期症状がほとんどないため発見が遅れるケースが多く、いかに早期発見できるかが課題となっています。

※出典: 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)


●早期発見・早期治療が難しい卵巣がん

卵巣がんは卵巣にできる悪性腫瘍です。「サイレント・キャンサー(静かながん)」と呼ばれるほど、初期のうちは自覚症状がほとんどないため、早期発見が難しい病気です。下腹部痛や不正出血、腹部の膨満感などが現れて受診したときには、がんが広範囲に広がってステージⅢ期、Ⅳ期まで進行していたというケースが多く、手術や抗がん剤などの治療をしても予後が厳しいことがあるといわれています。

原因としては、排卵時に卵巣の表面にできる傷が関連していると考えられていて、排卵回数が多いほど発症リスクが高くなるとみられています。一方、低用量ピルを服用していた、あるいは妊娠・出産回数が多い場合などは、排卵回数が抑えられるため発症リスクは低くなるとみられています。ほかには、子宮内膜症、肥満、食事なども発症に関係しているといわれています。年齢的には40歳代以降の女性が発症するケースが多くなっています。


●経腟超音波検査によって早期発見が可能

予後が悪いといわれる卵巣がんですが、5年生存率(ネット・サバイバル)はⅠ期では90.6%、Ⅱ期は76.6%、Ⅲ期は46.2%、Ⅳ期は27.8%※です。つまり、ほかのがんと同様に、早期に発見されれば予後はよい場合が多く、早い段階で発見することがとても重要です。

※出典: 国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」


そこで今注目されているのが、「経腟超音波検査」です。超音波検査は、超音波(エコー)を体に当てて体内に送り、その反射を映像化することで臓器の状態をチェックする検査で、婦人科ではおなかの上から超音波を当てる「経腹法」と、腟に細長いプローブ(探触子)を挿入して超音波を当てる「経腟法」が行われています。卵巣がんの早期発見に役立つのではと期待されているのは経腟法です。経腟法では、プローブを卵巣に近づけることが可能なため、より鮮明な映像で卵巣の形や大きさ、卵巣内部のようすなどをチェックすることができ、腫瘍などの異変をとらえることが可能です。


●子宮頸がん検診のオプションで経腟超音波検査が受けられる?!

経腟超音波検査は婦人科で受けられます。何か症状があって受ける場合は健康保険が適用されますが、通常は全額自己負担(目安は5,000円程度)になります。受け方や費用など、事前に婦人科で確認されるとよいでしょう。

また、自治体が実施している子宮頸がん検診の際に、医療機関によっては経腟超音波検査をオプション(有料)で受けられる場合がありますので、確認してみましょう。

検診の目的で超音波検査を受ける場合の頻度は、1年に1回がおすすめです。


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監修

成城松村クリニック 院長

松村 圭子