老化は口から? オーラルフレイルとは
最終編集日:2025/9/15
年齢を重ねることで、体力や気力が少しずつ衰えていく状態を「フレイル」と呼びます。そのなかでも、口まわりの機能に注目したのが「オーラルフレイル」です。
噛む、飲み込む、話すといった口腔機能が少しずつ低下することで、食事や会話に支障が出るようになり、栄養不足や筋力低下、さらには人とのかかわりが減るなど、全身のフレイルへとつながってしまうリスクもあるのです。
「まだ自分には関係ない」と思っていても、実は40代から始まっていることもあります。
たとえば、40代からリスクが高まる歯周病は、歯を支える組織に炎症が起こる病気で、放っておくと歯がぐらついたり、噛みにくさを感じたりするようになります。ちょっとした違和感や衰えのサインこそ、オーラルフレイルの入り口なのです。
●オーラルフレイルの危険性をセルフチェック
・お水、お茶、汁物でむせることがある
・やわらかいものばかり食べている
・噛み応えのある食材が厳しくなってきた
・滑舌が悪くなった、他者から聞き直されてしまう
・口が渇きやすい、口臭が気になる
・自分の歯が少ない、噛む力が弱くなった
上記の項目の中で思い当たることがありますか? ひとつでもある場合は注意が必要です。
こうした変化を放っておくと、やがて「噛めない」「話せない」といった状態につながる可能性があります。さらに、口腔機能の衰えによって食事内容が偏ることで栄養が不足し、心身の機能低下へつながってしまうケースもあります。オーラルフレイルは、そんな「負の連鎖」のはじまりでもあるのです。
●セルフケアで今日からできる対策を
フレイルは、適切な対応で健康な状態に戻れる可能性がある段階です。オーラルフレイルも同様に、意識してケアすることで改善が期待できます。
次のようなことを日頃から心がけましょう。
<日々のオーラルケアを丁寧に>
適切な歯ブラシを使って、できれば毎食後に丁寧に歯をみがきましょう。フロスや歯間ブラシなどを活用することで、歯ブラシでは届きにくいところまでケアできます。
入れ歯を使用している場合は、入れ歯専用の歯ブラシを使い、歯みがき同様に毎食後に洗浄するのが理想的です。就寝時は水に浸して保管し、3日に1度は専用の洗浄剤で清潔を保ちましょう。
<口まわりを意識した日常生活を>
噛む、飲み込む、話すといった口腔機能を維持するには、日頃のちょっとした行動の積み重ねが大切です。食事はよく噛んで食べるようにしましょう。また、積極的に会話をしたり、歌を歌ったり、口腔体操やマッサージを取り入れたりするのも効果的です。
<定期的にプロのケアを受ける>
歯科を定期的に受診しましょう。自分では落としきれない歯の汚れを除去することは、虫歯や歯周病の予防につながります。
また、2024年より保険診療による「口腔機能低下症」の検査や管理の対象が、50歳以上に拡大されました。かかりつけの歯科に相談し、検査を検討するとよいでしょう。
口は食べることや話すことを担う、大切な場所です。
ほんの小さな変化こそ見逃さず、丁寧にケアすることが大切です。
いつまでも元気に食べて話せる毎日のために、今日から口の健康に意識を向けていきましょう。
監修
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長 /東京大学 未来ビジョン研究センター 教授
飯島 勝矢