遺伝子検査を受けるメリットとデメリット ~受ける前に知っておきたいこと

最終編集日:2023/3/23

最近は、健康な人に向けたさまざまな遺伝子検査キットなどがあり、手軽に検査が受けられるようになりました。がんや糖尿病などの病気にかかるリスクから、ダイエットやアンチエイジングといった人々の興味を引くもの、子どもの潜在能力を知ることができるとうたうものなど、多種多様です。費用も数千円から数万円程度と幅広く、利用者数、商品・サービスの種類ともに増加傾向にあります。


病気、容姿、能力など、どれも気になる情報であり、検査をきっかけに生活習慣や美容法、子どもの学習法などを改善したいと思うかもしれません。しかし、専門的な医療機関を頼らずに自分で遺伝子検査を受ける場合は、事前に知っておきたいこと、考えなくてはいけないことがあります。


「遺伝子検査サービスを購入しようか迷っている人のためのチェックリスト10か条」

(武藤香織・東京大学医科学研究所教授による)

①あなたの病気の診断ではなく、病気になる時期も予測できません

②会社によって答えはバラバラです

③研究が進めば、確率は変わります

④予想外の気持ちになるかもしれません

⑤あなたには「知らないでいる権利」があります

⑥かかりつけ医に結果の解説を頼むことはできません

⑦血縁者と共有している情報を大切に扱いましょう

⑧強制検査・無断検査はダメ、プレゼントにも不向きです

⑨あなたのDNAやゲノムデータの行方に関心を持ちましょう

⑩子どもには、大人になって自分で選べる権利を残しましょう


●事前に知っておきたい大切なこと


私たちが手軽に受けられる遺伝子検査は、精密検査の代わりではありません。

例えば、すでに体内にがん細胞があったとしても「がんになる確率は低い」という結果が戻ってくる可能性があります。また検査項目のなかには、病気や体質と遺伝子の関係が定かでないもの、検査結果の解釈が医学的に確かではないものも含まれています。例えば、歌が好きで上手なのに「音楽の才能が低い」という結果が戻ってくるかもしれません。

このように、誤った判断や行動につながらないよう、検査結果を過信しないことが大切です。


日本では経済産業省が遺伝情報を取り扱う業界団体に対し、個人情報保護のガイドライン遵守を求めています。また、業界団体では、自主基準に基づく認定遺伝情報の取り扱い管理を推奨しています。この基準を満たして審査に合格すると、審査団体から与えられる認定ロゴを使用することができます。ただし、これは検査の質を保証するものではありません。

さらに、商品によっては、唾液などから抽出したDNAを海外で保管したり、解析したデータを共同で研究や開発に使う場合があります。国の法令や指針により、唾液や個人情報の取得前に使用目的や第三者提供の詳細を説明したうえで、同意を得ることが求められています。検査以外にどのような目的でどこの国で利用されるかは、事前に説明文書などでしっかり確認しましょう。


●子どもの可能性はだれのもの?


日本医学会のガイドラインでは、子どもの遺伝子を調べる場合には、本人の最善の利益を十分に考慮すべきであり、成年期以降に発病する病気の検査は、成長後の子どもの意思を尊重すべきだと定められています。お子さんの健康状態が気がかりな場合は専門の医療機関を受診しましょう。

また、子どもの学習・身体能力や感性を知り、教育やしつけ、将来の進路選択に役立てようというものもあります。子どもの将来をよりよいものにしたいという親心はとても理解できます。しかし、性格や能力などの特性について、遺伝子だけで説明できる部分は極めて限られており、科学者の間でも議論が続いています。


遺伝子検査の不確実性やリスクも考えたうえで、何が最善なのか、検討するとよいでしょう。

監修

東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 教授

武藤香織

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