子どものADHD(注意欠如・多動症)
最終編集日:2024/5/9
ADHD(Attention Deficit/ Hyperactivity Disorder)は発達障害のひとつです。幼児期からじっとしていることが苦手で、小学校に入学後に「授業中、歩き回る」、「私語が多い」、「忘れ物が多い」ことなどをきっかけに気づくことが多いと言われています。
●「多動性」「不注意」「衝動性」がADHDの特性
ADHDの子どもには次の3つの特性があります。
・多動性(じっとしていられない、授業中に動き回る、しゃべりだすと止まらないなど)
・不注意(忘れ物やなくし物が多い、約束を忘れてしまう、集中力が続かないなど)
・衝動性(急に走り出す、友だちのしていることをさえぎる、考える前に行動するなど)
ただし、これら3つの特性がすべて現れるわけではなく、多動性だけが極端に現れたり、2つの特性が同程度に現れたりするなど、子どもによって異なります。
しかも、この3点は子どもに通常よく見られる行動でもあり、元気な子とADHDと診断される可能性のある子に境界線を引くことは容易ではありません。集団生活や家庭生活に支障が出ている場合は、専門家に相談することをおすすめします。
●誤解されやすいADHDの子ども
ADHDは発達障害のひとつです。発達障害とは、生来的な脳の機能障害とも言われますが、最近では,“生来的な脳のタイプ”として理解すべきかもしれません。実際に、ADHDと診断される子どもは、上記の3つの課題があるように見える一方で、「物怖じしない」、「機転が利く」、「ユニーク」で「思いがけない力を発揮する」という面もある「脳のタイプ」を持っています。
誰にでも長所、短所はあります。ADHDの子どもの「症状」が生活に支障をきたしている場合、なかなか長所が注目されません。言いたいことを遠慮なく口にしたり、口より先に手が出てしまうことで、友だちとトラブルになったり、何度注意しても改まりにくいからという理由で大人から叱られたり、わがままとか、しつけや養育環境が不適切だからと誤解されることもあります。当たり前のように叱責が続くと、子どもは自信をなくし、親も周囲からの誤解によって傷ついてしまいます。その結果、不登校や引きこもり、うつなどの二次的な課題が生じる場合もあります。
こうした事態を回避するためにも、ADHDの3つの「症状」で生活に支障があると保護者が感じて困ったときは、専門家に相談したり、医療機関を受診し、正しい理解と支援を得ることが有効といえます。
●周囲の理解と支援によって、子どもの生きづらさをやわらげることは可能
身近な専門家としては学校の「スクールカウンセラー」や「特別支援教育コーディネーター」がいます。相談機関としては「発達障害者支援センター」、「児童(子ども)発達支援センター」、「児童(子ども)家庭支援センター」などがあります。
子どもがADHDかどうかかの診断は簡単ではないため、小児神経科や児童精神科などで診断を受ける必要があります。そこで診断がつけば、学校関係者や周囲の人たちからの適切な対応やサポートも得やすくなります。受診先は、地域によって異なるため、相談した専門家やかかりつけの小児科や保健センターなどで紹介してもらうとよいかもしれません。
生来的な脳のタイプであるADHDは、治療をしたら治るという病気でも障害でもありません。一人ひとりの生きづらさと長所を把握し、自己評価を落とさないために本人の思いを受け止め、ユニークさや機転の良さなど、良い面を認めほめ続けることです。周囲から理解された、信頼された、という経験がADHDの子どもたちには必要不可欠です。そのためには、生活環境に働きかけることも必要です。日常生活や学校生活をよりよく送るためには、お互いが折り合いをつける寛容さが求められます。
監修
こころとそだちのクリニックむすびめ 院長
田中康雄
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