若い社員の能力と比較して落ち込む
まだ社会に貢献したい気持ちが強く、退職後も希望がかなって再雇用されました。しかし、新しい職場は今までと違い、大勢の若い社員がパソコンを使いこなし、てきぱき仕事をしていて、自分が役に立てず、取り残されている気がして落ち込みます。
男性/60代
2021/12/21
定年という人生の節目を迎え、仕事から解放され、悠々自適に暮らすという選択肢もある中、「まだ働きたい」「社会に貢献したい」という意欲を持ち、元気に働き続けられるのはすばらしいことです。そんなあなたの意を汲み、迎えてくれる職場があるということもまた、ありがたいことだと思います。一方で、長年親しんだ職場とは違う環境に戸惑うと同時に、今の能力を若い人と比べてしまい、落ち込む気持ちもよく理解できます。
確かに、加齢による様々な能力の衰えは、誰にも訪れるものです。人間の知能は、思考力、暗記力、計算力など、新しい場面への適応に必要な「流動性知能」と、生活上の習慣や専門的な知識など、日常生活や仕事上の経験の積み重ねにより獲得される「結晶性知能」から成り立っていると考えられています。これまで知能の発達に関しては、成年期以降は徐々に低下していくという考え方がありました。しかし、現在では、流動性知能が、50代から低下していくのに対して、結晶性知能は、60代まで上昇していく傾向が確認され、その後も80代前半頃までは、緩やかに低下することが示されています。こうした研究結果から、人は生涯にわたって発達する存在なのだということがわかります。
あなたには、長い職業生活の中で培ってきた人脈やネットワーク、さらに、豊かな人生経験から生まれた「知恵」や「英知」があります。そうした「結晶性知能」が基盤となるこの資源や能力は、若くて経験の浅い人には持ち得ない、まさに、シニア特有のものといえるのではないでしょうか。若いときには理解できなかった、あるいは身につかなかったことが、年齢を重ねるにしたがってできるようになったという経験は、あなたにもきっとあるはずです。その能力は、たとえば、業務上のトラブルや困難に直面したとき、問題解決のために発揮できる能力などが考えられます。
今の職場で、あなたに求められている役割は、若い人たちと同じようなやり方で、同じような業務をすることではないはずです。長い職業人生を振り返ってみても、その時々、あなたの役割や立場は変わってきたのではないでしょうか。今、自分に求められている役割とは何なのか、上司と相談しながら、改めて考えてみましょう。会社があなたを再雇用した理由がわかれば、それがあなたの役割なのだと思います。
新しい環境に適応していくためには、かなりのエネルギーを要します。また、年齢の離れた社員とのコミュニケーションはとりにくいものです。それでも、積極的に職場の人たちと話し合い、経験を伝えながら、自分の存在価値を見つけ、あなたらしく生き生きと働けることを願い、エールを送りたいと思います。
回答者
保健同人フロンティアメディカルチーム
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