Question

親を施設へ入所させることに罪悪感

同居中の母親の認知症が進行し、自力での生活が難しくなりました。仕事を抱えながら、何とか一人で介護を続けてきましたが、困難と感じ、泣く泣く施設に入所させることに決めました。しかし、これでよかったのかと罪悪感を抱いています。

女性/50代

2021/12/21

Answer

親の認知症などが悪化し、自力での介護が限界だと感じたとき、多くの家族が「このまま自宅での介護を続けるか」「施設に入所させるか」の判断に迫られます。その際、まじめで親思いの人ほど「長年、育ててくれた親だからこそ、自分が面倒をみなくてはいけない」と考え、決断を迷うことが多いと思います。日本には従来「年老いた親の面倒は子がみるもの」という閉鎖的な固定観念があることも否めません。仕事を抱えながら、一生懸命にお母さまを介護してきたあなたには、一層その気持ちが強いのではとお察しします。


あなたが抱く罪悪感の正体について考えてみましょう。「大切な親を見捨てることになる」という親への申し訳なさが一番でしょうか。あるいは、周囲の目や親族からの批判が気になるのでしょうか。「自分だけが楽になる方法を選択した」という自責もあるかと思います。しかし、現実はそう単純ではありません。施設に入所しても、お母さまの様子は気になりますし、職員との連携や相談も不可欠ですから、定期的に足を運ぶ必要があります。また、施設内で何かあれば、すぐに連絡が来て呼び出されるのは家族です。家族の負担が軽減されるのは確かですが、すべてなくなるわけではないのです。


罪悪感が強いために、入所するデメリットばかりに目が向いていませんか。ここで、入所のメリットについても考えてみましょう。生活する環境が変わることで、慣れるまでには時間を要すると思います。しかし、大勢の専門スタッフや、他の入所者たちとのコミュニケーションにより、たくさんの刺激を受けることで、認知症の進行予防につながる可能性があります。また、24時間体制で専門的なケアを受けられることは、本人と家族の大きな安心になるはずです。「自宅よりも良い環境」で適切なサポートが受けられると考えることもできるのです。


お母さまの視点に立てば、「自分の子どもに世話してもらいたい」と思う人もいれば、「子どもに面倒をみてもらうのは恥ずかしい」「子どもの世話にはなりたくない」と考える人もいるでしょう。専門家だからこそ、安心して頼れるということもあります。介護保険制度は、介護を家族だけで行うのではなく、社会全体で担うという考え方に基づいています。本人が必要な専門的ケアを受けられる大切さはもちろん、家族がその人らしい生活を送るための介護者へのサポートという意味合いも重要視されています。


施設を選ぶときには、施設内の見学や実体験をさせてもらい、職員としっかり話をしてみましょう。そうすることで、あなたもお母さまも納得できる場所を選べると思います。入所後も、「できる限り顔を見せる」「時には外に連れ出してあげる」など、無理のない範囲で、家族としてのあなたなりの役割を実行することで、「介護に携わっている」という感覚が持てるのではないでしょうか。あなたに余裕やゆとりができることで、これからも、おだやかな気持ちでお母さまにかかわれるといいですね。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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