Question

半年前に定年退職した父の様子がおかしい

半年前に定年退職した父が、元気がなく落ち込み気味です。現役の間は営業職で毎日忙しいながらも充実していたようで、毎日とくにやることがなくなってしまった現状に戸惑っているように思えます。最近では話しかけても上の空で、家でゴロゴロしてばかりいます。母もそんな父を気遣って、家の手伝いを頼むなどしていますが、私も母も父への対応に困っており、家庭内もどんよりしています。どのように声をかけてあげるのが、父にとっていちばん負担にならないのでしょうか。

女性/30代

2021/12/21

Answer

お父様にとって、仕事にかけた時間やエネルギーはなにものにも替えがたいものだったのかも知れません。ご家族としては、何かしなければと、話しかけたり、手伝いを頼んだり、お父様を気遣っていらっしゃる様子が目に浮かぶようです。

お父様は退職後、どのような生活を送りたいかを考えていた様子はありましたか。もし、ぼんやりとでも思い描いていたことがあれば、それをよく聞いみるのも家族としてできるサポートのひとつです。すぐに実現できないにしても、あれこれと話す時間を楽しむだけでもよいかも知れません。ただし、定年後の生活について具体的なイメージが浮かばないとしても、それは珍しいことではありません。むしろ、定年する前からあれこれと準備し、退職後すぐに新しい生活をエンジョイできる方は少数派ではないかと思います。新しい生活を受け容れ、頭を切り替えるのは、それほど容易なことではないようです。では、受けいれるまでの間、ご家族としては何をしてあげたらよいのでしょうか。


ここで、少し視点を変えて、この年代の心について考えてみましょう。心理学者のエリクソンの研究によると、この年代の心の発達課題は、「次の世代に関心を寄せて、次世代を育むこと」とされています。また、もう少し年齢が上がると、「自分の人生について問い、肯定的に受け止めること」が課題であるとし、この課題が達成されないと心が危機にさらされるとしています。会社で活躍してきた人は、仕事を通してこれらの心の課題と取り組んでいることが多いのですが、定年退職は自動的に課題を達成する場を奪ってしまいます。成し遂げてきたことや培ってきた知恵などを伝え育てる相手がいなくなり、これまでの自分を否定されているように感じる人もいるので、まさに心は危機的な状況といえるでしょう。


少しむずかしい話になりましたが、このような心の課題という観点から捉えてみると、お父様が今後、家庭や地域社会の中に活躍の場を見出していくことがターニングポイントとなります。そして、新しい世界に一歩踏み出すためには、定年後の自分が家庭の中で認められているという感覚が必要です。ご家族としてできることは、この感覚ができるだけ感じられるよう、お父様のこれまでのがんばりや成し遂げてきたことなどに関心を向けるのもよいでしょうし、戸惑うのも自然なことだと、そっと見守るだけでもよいのではないでしょうか。やがては心の危機を乗り越え、家庭や地域社会など新たな場で、自分なりの生き方や役割を見出していくのではと思います。焦らずに見守ってあげてくださいね。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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