症状があるときの食事の工夫

最終編集日:2022/1/28

「食欲がない」「口内炎が痛い」など、治療中にはさまざまな不調があります。
つらい症状別に、合う食べ物や食べ方の工夫を知っておきましょう。


口内炎が辛い


化学治療や放射線治療の副作用で口内炎になり、飲食を苦痛に感じてしまう人も多いようです。口内炎になると、口の中が乾燥したり歯ぐきやのどがヒリヒリするといった症状が現れ、治療が終わると徐々に改善していきます。これらは治療による一時的な症状ですが、なるべくストレスなく食事がとれるよう工夫してみましょう。
症状がひどいときは、極端に熱いものや冷たいもの、固いもの、刺激の強いもの、酢の物、かんきつ類などは口の中の粘膜を刺激するので、なるべく避けます。ご飯はやわらかめに炊くか、おかゆや雑炊などにするとよいでしょう。人肌程度に冷ましてから食べると、刺激も少なく、食べやすいでしょう。
野菜などの固い食べ物は、マヨネーズ、ソース、ヨーグルト、ドレッシングなどを合わせると食べやすくなります。カロリーオーバーにならないよう、量にも気をつけながら試してみてください。なお、フライなどは衣が粘膜を刺激するので、煮物や焼き物、ソテーなどのほうが食べやすいでしょう。
口の中が乾燥していると、より痛みを感じやすくなるので、口内は湿らせておくことが大切です。食事のときは飲み物や汁物を添えるなど、うまみを利用して唾液(だえき)を出やすくするのも一法です。お茶や飲むゼリーなどで、こまめに口の中を潤しましょう。


味・においがわからない


「何を食べても味がしない」「食べ物のにおいを不快に感じる」などの症状をそれぞれ味覚障害・嗅覚障害といいます。化学治療や放射線治療の副作用、心因性などで生じることがあります。治療が原因の場合は、治療開始後すぐに症状が現れ、治療後2〜4週間たつと回復することが多いようです。食事が楽しめず、気が滅入りがちにもなりますが、治療による一時的な副作用なので、考えすぎないようにしましょう。
味覚障害は、塩味などを薄く感じる、逆に味つけに過敏になり味を濃く感じる、苦みを感じることなどがあります。また嗅覚障害もある場合は、においにも敏感になります。症状や感じ方は個人差が大きく、自分に合った食べ物や食べ方を見つけることが大切です。
味覚・嗅覚障害は、魚や肉、炊きあがりのご飯のにおいを不快と感じることが多いようです。においがきついと感じる食材は一時的に避け、ご飯はおにぎりやすし飯にして冷まして食べるのもよい方法です。また、冷たいめん類やサンドイッチだと比較的口にしやすい人も多いようです。
口の中には味を感知する味蕾(みらい)という細胞があるのですが、口内が乾燥すると味蕾への伝達が悪くなり、味がわかりにくくなります。そのため、まめなうがいで口内を潤すことも大切です。水を口にするのが不快な場合は、レモン水や緑茶など、不快と感じないもので、うがいをしてみましょう。


吐き気・嘔吐


吐き気・嘔吐(おうと)は、化学治療の副作用のなかでも、特に苦痛な症状のひとつです。吐き気止めの薬が効かない人や、効いて吐けなくなることがかえって辛(つら)いと感じる人もいます。症状がひどい時期は、無理せず食べられるものを口にするようにしましょう。満腹にすると吐き気を催しやすいので、腹五、六分目くらいを心がけましょう。
食事は“こまめに少量ずつ”がポイントです。朝昼晩きちんと食べることにこだわらず、体調に合わせ少量ずつとるようにします。なお、よくかんでゆっくり食べると消化がよくなります。
また、口にしやすいスープやサンドイッチなども、具材が多すぎると、それぞれのにおいが混ざり合い、不快に感じることがあります。食材は1、2種類、味つけは塩のみにするなど、シンプルな料理を心がけましょう。同じ食材を食べ続けることが吐き気の原因になることもあるので、変化をつけるようにすると安心です。
嘔吐を繰り返すときは、脱水症状にならないよう注意が必要です。嘔吐すると、水分と一緒にナトリウムやカリウムなどの電解質も失われます。水分補給をするときは、電解質が含まれている経口補水液※1やスポーツ飲料などがおすすめです。


下痢・便秘


化学治療で下痢や便秘になる、または下痢と便秘を繰り返す人がいます。下痢をすると、「水も口にしたくない」という心境になりがちです。しかし、下痢で大量の水分を失ったときこそ、こまめな水分補給が必要です。体温に近い温度の水を時間をかけてゆっくりとるようにしましょう。一気に大量の水を飲むと、胃腸への刺激になり下痢しやすいうえ、吸収が追いつかずすぐに排泄(はいせつ)されてしまいます。水のような便が続く場合は、早めに受診しましょう。
下痢のときは、香辛料や脂肪を多く含む食品など、胃腸に刺激を与えるものは避けましょう。海藻やきのこなど、食物繊維の多い食品も消化しにくいので、控えたほうが安心です。おじややスープなどの温かい料理は、胃腸にやさしいのでおすすめ。具は刻んだ野菜のほか、卵や豆腐、カニ缶などを加えると栄養バランスもよくなります。
また、便秘の解消には、規則正しく栄養バランスのよい食事をとることが大切です。特に朝食を同じ時間にとることは腸へ刺激を与え、食後のトイレタイムのきっかけになります。便秘改善のためには、主食と野菜を毎食とるようにしましょう。ひじき、ごぼうなど食物繊維の多い食品も適度にとると便秘改善の効果が期待できます。加えて、脂肪も適度にとり入れましょう。
さらに便が硬くなることを防ぐために、こまめに水分をとるようにしましょう。冷たい水や牛乳も、効果的です。一方、うさぎの糞(ふん)のような便秘の場合は、刺激を避け、リラックスしたうえで、冷えないように過ごしましょう。


食欲がわかない


病気のショックや不安、また治療の副作用から、食欲がわかなくなることがあります。そんなときは家族に合わせたり、決められた時間に無理して食べなくても大丈夫です。サンドイッチやおにぎりなど、少量ずつつまめるものを用意して、気が向いたときに食べるようにしてみましょう。
食事の盛りつけ量が多いと、見るだけで負担に感じてしまうこともあるようです。少量ずつお皿を分けて盛りつけると、食欲が出やすくなります。
また食べ物の味つけや温度もいろいろ試してみて、自分に合うものを見つけましょう。さっぱりしたものや味つけの濃いもの、冷たいものや温かいものなど、試してみると「これなら食べられる」というものがあるはずです。食欲不振のときは、一般にさわやかでのどごしのよいものが食べやすいので、水分の多い果物やシャーベットなどもおすすめです。



※1 経口補水液
水分と電解質をすばやく補給できるようにナトリウムとブドウ糖の濃度を調整した飲料。熱中症の予防や下痢、嘔吐時の水分・電解質の補給に役立つ。

監修

淑徳大学看護栄養学部,栄養学科,教授

桑原節子

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