体調を整える食事テクニック

最終編集日:2022/1/28

栄養成分は毎日の食事からしっかりとることが大切です。
ただし無理は禁物。体調と相談しながら、上手に「食」と向き合いましょう。


治療中にとりたい食品とは


治療中には、体調を整え治療の効果を高めるために、バランスのよい食事で偏りなく栄養をとることが基本です。さらに、少し工夫をしたり、気をつけたりすることで、より栄養価の高い食事をとることもできます。
毎日の主食(ご飯やパン)を精製度が低いものにすることがそのひとつです。ご飯は、精白米よりも玄米や雑穀入りのほうが食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富でおすすめです。
雑穀は歯ごたえがあるので、かむ回数が多くなります。そのため満腹感が得られやすく、肥満防止の効果も期待できます。また玄米に含まれるぬかには脱臭効果があり、一緒に食べることで魚などの食材のにおいを抑えます。治療の副作用などでにおいに敏感なときは、試してみてはいかがでしょうか。精製度が低い穀類、雑穀には、玄米、発芽玄米、押し麦、もち麦、きび、あわなどがあります。味や食感が種類によって異なるので、自分に合うものを見つけてみましょう。
毎日食べる野菜は、なるべく新鮮な旬のものを選ぶようにしましょう。旬の野菜には、その時期にとりたい成分が豊富に含まれています。体調がよいときに新鮮な旬の野菜をまとめて買い、洗って小分けにしたり、加熱して冷凍したりしておけば、いつでも手軽に野菜をとることができます。無理のない範囲で、楽しみながら季節の野菜をとり入れましょう。


免疫力を高めましょう


長期の治療を続けるためには、免疫力を高めることが大切です。免疫力を高めるのに必要なのは、エネルギーやたんぱく質、ビタミン類などの栄養を十分にとること。そのためには、栄養バランスがとりやすい組み合わせの食事をとることが近道です。足りないものがある人は、食卓にプラスするように心がけてみましょう。
また、免疫細胞の約6割は腸内に存在するといわれています。免疫力を高めるには、腸内環境をよくして免疫細胞を活性化させることも大切です。
腸内にはビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌に加え、体に悪い働きがある有害菌が数百種類生息しています。その数は、合わせて100兆個以上。有用菌と有害菌のバランスが崩れると、便秘や下痢になったり、免疫力の低下により、感染症にかかりやすくなってしまいます。
腸内の有用菌を減少させないためには、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルト、チーズ、納豆などのいわゆる発酵食品をとり入れましょう。また、食物繊維が多い野菜や海藻、きのこ類などを十分にとることも効果的です。


栄養剤・補助食品を上手に利用


「食欲がない」「副作用で食事がとれない」ときは、栄養剤や栄養補助食品を利用するのもひとつの手です。最近は、粉末タイプのほか、ドリンクやゼリーなど、さまざまな製品が出ています。病院の売店や薬局、通信販売などで購入できるので、主治医や看護師、管理栄養士に相談のうえ、試してみましょう。
栄養剤・栄養補助食品は、常温で保存できるものも多いので、常備しておくと体調の悪いときに手軽に栄養補給ができます。さっぱりしたものや甘いものなど、味もいろいろあります。口に合わない場合は、食べ方を工夫したり好みの味にアレンジすると、食べやすくなるようです。たとえばミルク味のドリンクに少量のインスタントコーヒーを混ぜる、凍らせてシャーベット状にするなど、さまざまなアレンジが可能です。


正しい情報を見極めて


「この食材をとるとがんが治る」などと、さまざまな情報が飛び交っています。食事に関して、疫学※1的な見解が示されているものがありますが、まだデータが不十分なものが多いのが現状です。また、がん再発防止についても、ある食品や栄養成分のみが効果があるという報告はありません。これらのことをふまえ、情報を見極めるときは、まず、どこが発信元かを確認しましょう。国の指針や専門の学会、国立の研究機関が発信する科学的根拠のある情報を参考にすることをおすすめします。
食事で十分な栄養がとれていれば、サプリメントは必要ありません。がん予防に関する世界中の研究をもとに作成された報告書『食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望・要約』※2には「サプリメントに頼らず、食事のみから必要な栄養をとること」とあります。主治医が必要と判断した場合を除き、栄養素は食事で補うようにしましょう。サプリメントをとりたい場合、まずは主治医に相談してみましょう。自己判断でサプリメントを摂取すると、ある栄養素だけが過剰になったり、特定の栄養素を排泄(はいせつ)したりして、かえってバランスが崩れてしまうこともあり要注意です。



※1 疫学
集団を対象として、病気や不調の要因や実態を明らかにするための学問。伝染病の調査・研究から始まったが、現在では公害などの健康問題も対象としている。


※2 『食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望・要約』
世界がん研究基金/米国がん研究機構(WCRF/AICR)が2007年11月に発表。全世界の科学的論文から、がん予防に関するエビデンスのあるデータをまとめて報告したもの。

監修

淑徳大学看護栄養学部,栄養学科,教授

桑原節子

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