口の中のトラブルと対処法

最終編集日:2022/1/28

がんの治療を乗り越えるためには「しっかり食事ができる」ことが大切です。しかし治療中は口腔(こうくう)トラブルが起きやすい状態。対策や食べやすい食事について知っておきましょう。


痛みや不快感を伴う口腔トラブル


化学治療中は、口内炎をはじめ口腔内にさまざまな副作用が起きます。むし歯や歯周病※1などのトラブルを抱えたまま、化学治療がはじまると、今まで症状がなかった人でも状態が悪化し、痛みや腫れを起こしやすくなります。特に、成人の8割が抱えているといわれる歯周病は、初期は「歯ぐきが腫れる」「食べた物が挟まる」など、痛みを伴わない症状であることが多いため、自分が歯周病と気づいていない人が非常に多いのです。
口やのどに、放射線治療をしている場合も、たびたび副作用が起きます。放射線治療による副作用は、重症で長引く傾向があります。
放射線治療がはじまって約2週間すると、口の中の粘膜がだんだんと赤くなり、痛みを伴う口内炎ができます。強い痛みはその後も続き、重症化すると水を飲むのもつらくなります。治療が終わると、口内炎による痛みは次第によくなりますが、放射線によって減った唾液(だえき)の量は、完全には回復しません。 
口の中の乾燥により、初期には口内のネバネバやヒリヒリ感が続き、食べ物の味が感じにくくなります。また、唾液には抗菌作用があり、口内の雑菌の繁殖を防いでいます。唾液が少なくなって口が乾くと、強い口臭がしたり、むし歯ができやすくなる「放射性う蝕(しょく)※2」になることもあります。


強い痛みを伴う「口内炎」


口内炎には強い痛みが伴います。特に、のどの粘膜に口内炎が広がると、固形物はもちろん、水を飲むのも困難になります。
初期の口内炎は「口の中がザラザラする」「のどに違和感がある」といった症状ですが、次第に口の中が強く痛み、重症化すると痛みで食事ができにくくなります。点滴やチューブで栄養を補給するために、がんの治療が一時中断されることもあります。
口内炎の痛みは、時間の経過とともに落ち着きますが、体の抵抗力が弱っていたり、口の中の衛生状態が悪いと、口内炎の傷から感染症を起こすこともあります。ヒリヒリ、ピリピリとした強い痛みがあるときは、口腔カンジダ症※3などの感染症が疑われるので、主治医か歯科医に相談しましょう。


口内炎の症状

・歯や歯ぐきがしみる、痛む
・赤み、白点、ただれ、水疱などのできものがある
・口の中の出血
・食べ物が飲み込みにくい
・会話がしにくい


正しい歯磨きとうがいが大切


口の中の細菌感染を防ぎ、治療時のトラブルを抑えるために大切なのは、「細菌の数を減らす」ことです。そのためには、毎日ていねいに歯磨きをしましょう。
歯ブラシや歯磨き粉に、特に決まりはありませんが、ブラシは「やわらかめ」と表示のあるもののほうが、歯や歯ぐきへの負担が少なくなります。歯ブラシを歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間にきちんと当てて、小刻みに動かし磨きましょう。1日3~4回が目安ですが、無理のない範囲で構いません。歯磨き剤がしみるときは、水だけで磨き、強い痛みがあるときは、歯ブラシを使わずに、綿棒やスポンジブラシで汚れをとりましょう。
また「口の中を乾燥させない」ことも大切です。そのために心がけたいのが、こまめなうがいです。できれば、1日7~8回、目安として2時間ごとに、水かぬるま湯、生理食塩水などで、うがいをしましょう。痛みが強いときは、痛み止めが入ったうがい薬を処方してもらうこともできます。


酸味が強い、乾いた食べ物は避けて


口内炎で痛みがあるときは、食事にも工夫が必要です。熱いものは冷まして食べるとよいでしょう。塩分や香辛料を多く含む食材は刺激になるので、痛みがある間は避けてください。酸味の強い食べ物(トマトやパイナップルなど)や、ザラザラして乾いたもの(クラッカー、ナッツ、せんべい)も控えたほうがよいでしょう。おかゆやバナナ、ゼリーなどが食べやすい食品です。
痛みで食事が難しいときは、朝昼晩にこだわらず、少量を4~5回に分けてとるのもよいでしょう。固形の食べ物は脂肪分を含んだマヨネーズをつけると、食べやすくなることもあります。


がん治療の前に予防的ケアを


がん治療中は、口腔トラブルが起こりやすいので、事前にかかりつけの歯科医院などで、歯石や歯垢を除去してもらいましょう。こうした口内の大掃除を行うことで、口腔トラブルのリスクは大幅に減らせます。
むし歯や歯周病など、がん治療中にトラブルになりそうなことがあれば、できるだけ治しておいたほうがよいでしょう。もし、歯の治療が、がんの治療開始に間に合わないときは、歯科医と相談しながら、がん治療が落ち着くまで問題なく過ごせるよう、必要最低限の応急的な治療を行いましょう。また、歯の磨き方やうがいの仕方など、セルフケアについても、指導を受けておくと安心です。


※1 歯周病
歯と歯の間や、歯ぐきのすき間にたまった歯石や歯垢(しこう)が原因で、痛みや出血などのトラブルが起きる病気。重症化すると歯を支える歯槽骨が弱り、歯が抜け落ちてしまうことも。


※2 放射性う蝕
放射線治療が終わったあとに、むし歯ができやすくなること。放射線治療によって唾液が少なくなることが原因。


※3 口腔カンジダ症
カンジダ・アルビカンスという真菌(カビ)によって起こる感染症。カンジダ菌は口腔内の常在菌の一種だが、体の衰弱などによって増殖し、痛みや味覚障害を引き起こす。

監修

がん研有明病院,健診センター 検診部部長,リンパケア室長

宇津木久仁子

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