デリケートな肌や爪を守る

最終編集日:2022/1/28

がんの薬は体のさまざまなところに作用するので、治療中の肌や爪はデリケートな状態です。紫外線対策やネイルケアで、よい状態を保ちましょう。


化粧下地やチークで健康的な顔色に


化学治療がはじまると、皮膚の細胞分裂が阻害されたり、メラニンを生み出す細胞(メラノサイト)が活発になるために、さまざまな副作用が起こることがあります。そのため「しみが増えた」「肌が以前より黒くなった」「顔色がさえない」といった色素沈着によるトラブルも少なくありません。まずは、保湿を中心としたスキンケア で肌を整えましょう。
顔色が気になるときは、ファンデーションの前に、コントロール効果のある化粧下地を塗ると、カバー効果があります。顔色がよくない人はピンク、くすみや赤みが気になったらグリーン、肌の赤みにはアイボリーが効果的です。しみやくすみが目立つときはイエローやオレンジを使ってもよいでしょう。これらの色は、肌にのせると自然になじみ、男性でも使いやすいでしょう。
さらに血色よく見せるには、チーク(頬紅)が役立ちます。チークをブラシにとり、鏡に向かってにっこりしたときに一番高く見えるところを中心に、楕円(だえん)形にポンポンとのせると、お風呂上がりのような、ほんのり上気した肌に仕上がります。ピンクやオレンジのほか、落ち着いたベージュ系の色味を選べば、男性でも違和感なく使えるでしょう。


紫外線対策にも配慮を


化学治療や放射線治療中は紫外線の影響を受けやすいので、日焼けに注意しましょう。日焼けにより、前述の色素沈着が悪化する場合もあります。外出時はなるべく直射日光に当たらないよう日傘やサングラス、つばの広い帽子を活用しましょう。服はできるだけ長袖で、UVカット素材がよいでしょう。
紫外線は4月から増えはじめ、夏にかけてピークを迎えます。また晴れた日だけでなく、曇りや雨、雪の日にも降り注ぎます。つまり、季節や天候にかかわらず、紫外線対策が必要です。紫外線の量は、天気によっても異なるので、天気予報や気象庁の紫外線情報などを参考にしてください。
日焼けを防ぐために活用したいのが、日焼け止めクリームです。紫外線とひと口にいっても、地上に到達するものには「UVA」と「UVB」の2種類があります。日焼け止めクリームにはUVAを防ぐ指標として「PA※1」、UVBを防ぐ指標として「SPF※2」の表示がついているので、確認しておきましょう。日常生活であれば「SPF20以上」「PA+」あたりを選ぶとよいでしょう。
また、日焼け止めを使うときに大切なのは、その塗り方です。使用量は、クリームやジェルタイプを顔に塗る場合、人差し指の1本分程度です。十分な量を塗らなければ、表示されている数値の効果はあまり期待できません。日焼け止めは、汗や水分で落ちてしまうこともあるので、外出時は持ち歩き、2~3時間に1回は塗り直したほうがよいでしょう。
長時間外出する際はもちろんですが、ちょっとした買物や、洗濯物を干すときなどの「うっかり日焼け」にも注意するようにしましょう。


肌だけでなく爪のケアも忘れずに


爪はおもにたんぱく質のケラチンで構成されています。硬さは均一でなく、指先にいくほど割れやすくなります。
化学治療で皮膚の細胞の増殖が阻害されたり、メラノサイトが活発になると爪が変色したり、薄くなって割れやすくなるなどのトラブルが現れます。


爪のケア

爪はできるだけ短く切りましょう。爪専用やすり(ネイルファイル)を使うときは、やすりを爪に対して45度の角度に当て、一定方向に削ります。特に足の爪は、両端を深爪すると、爪が伸びてきたとき皮膚に食い込むので、切りすぎないようにしましょう。

爪の保湿

水分をつけたまま放置すると、爪が乾燥して傷みやすくなります。爪にトラブルがなくても、普段から手を洗ったあとや入浴後には、ハンドクリームやオイルを爪の根元に塗り込むようにして保湿しましょう。

爪の保護

爪の表面がでこぼこしていると、爪が洋服に引っかかったり、傷がつきやすくなったりします。マニキュア(ネイルカラー)のベースコートを塗ったり、液体ばんそうこうを使うのもよいでしょう。黒く変色している場合は、ベースコートの上から淡いピンク系や、オレンジ系の色を塗ると、カモフラージュ効果があります。これらの色は、男性でも違和感がありません。もし、爪のつやが出すぎて気になるなら、マットコートと呼ばれるネイルカラーのつやを消す商品もあります。また、ネイルを落とす際に使う除光液は、できるだけアセトン不使用のものを選ぶとよいでしょう。
爪がはがれてしまったときには、ネイルチップ(つけ爪)もあります。しかし、爪のまわりに炎症や痛みがあるときは使用できないので、事前に主治医や看護師に相談してください。


ジェルネイルはしてもいいの?


ジェル状の合成樹脂を爪に塗り、UVライトで固める「ジェルネイル」。女性に人気ですが、ネイルは数週間装着したままなので、その間、爪の状態を観察できず、気づかないうちに炎症やトラブルが進行していることも。カビや細菌の繁殖が起きることもあるので、避けたほうが無難でしょう。


※1 PA
「Protection Grade of UVA」の略。しみやしわの原因となる紫外線A波(UVA)を防ぐ効果の程度を表す。PA+からPA++++まで4段階に分けられ、+の数が多いほど効果が高い。


※2 SPF
「Sun Protection Factor」の略。日本語で紫外線防御効果を意味し、肌が赤くなる日焼けの原因になる紫外線B波(UVB)を防ぐ指標として使われる。数字が大きいほど、B波を防ぐ効果が高い。

監修

がん研有明病院,健診センター検診部部長,リンパケア室長

宇津木久仁子

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