「卵子凍結」その2 ~実際のプロセスと費用の目安

最終編集日:2024/5/20

卵子を取り出す方法、痛みや副作用、費用など、卵子凍結の気になる点を解説します。


●複数個の卵子を採取するため、排卵誘発をする

卵子凍結の手順は、まず問診と健康状態のチェックから始まります。採卵や将来の妊娠に問題がないかをチェックするため、卵巣や子宮の状態、感染症の有無、肝機能や腎機能などを検査します。一度に何個ぐらい採卵できるかを予測するために、卵巣内の卵子の数の指標となる「AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査」(血液検査)も必須です。

健康状態に問題がなければ、次は「排卵誘発」のステップに進みます。通常、排卵される卵子は1個ですが、一度に複数個の卵子を採取して凍結するために、排卵誘発剤を使う必要があります。具体的には月経が始まったあと、4〜10回程度の注射(自己注射)と内服薬の服用を行います。


●採取した卵子のうち、成熟卵子だけを冷凍保存する

月経開始から12〜14日目が採卵日の目安ですから、その頃に経腟超音波で卵子の状態を確認したうえで採卵します。採卵は超音波の画像を見ながら、腟から細い針を卵巣に刺し、卵子を採取します。10個程度の採卵であれば10分ほどで終わりますが、注射のような痛みがあるので、局所麻酔と痛み止めの座薬を使います。

採卵後は直ちに卵子の状態をチェックし、未成熟卵子や変性卵子を除外し、成熟卵子のみを凍結保存します。一般的に、35歳以下の場合は採取された卵子の90%程度は成熟卵子で、未成熟卵子は10〜15%程度、変性卵子は5%以下ですが、38歳を超えると3個に1個が変性卵子です。

卵子は融解(解凍)後の生存率(80〜95%程度)や受精率、着床率を考慮すると、10個以上(できれば20個以上)の卵子を冷凍保存しておくのが望ましいとされています。もし、1回に数個しかとれず、もっとたくさん保管したい場合は、再度採卵する必要があります。


●排卵誘発剤や採卵時のリスクはゼロではない

排卵誘発剤の副作用としては「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」があり、腹痛や腹部膨満感が生じます。これを回避するため、刺激が過度にならないように投薬は慎重に行われますが、効果の出方に個人差があるため、まれに卵巣がはれてしまう人がいます。その場合は数日間の自宅安静が必要です。入院が必要なほど重い副作用が生じるのは全体の1%以下です。

また、採卵は安全な手技ですが、下腹部が痛んだり、出血したりすることはあります。それとは別に、約0.3%程度ではありますが、採卵の際に誤って腸や膀胱などを傷つけたり、卵巣表面からの出血、卵巣内の感染が起こる可能性があります。


●採卵、凍結保管までの費用のほか、2年目以降の保管料も必要

卵子凍結の費用は医療機関によって異なりますが、診察や検査、排卵誘発剤、局所麻酔、採卵、凍結、初年度保管料などの合計で30〜70万円が目安です。1回の採卵で十分な数の卵子が採取できずに再度採卵をする場合は、その都度費用がかかります。2年目以降の凍結保管料も必要で、10〜12個保管で年間4〜11万円が目安です。

卵子の凍結保管は基本的に採卵した医療機関が行います。継続したいときは、毎年、契約を更新します。保管期間は満45歳の誕生日までと設定しているところがほとんどですが、医師と相談のうえで50歳の誕生日まで保管してくれるところもあります。


監修

グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長

岡田有香

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