目標を達成できない意志の弱い自分

進学や就職といった人生の節目や、年始や年度始めなどに、人は、何か新しいことをやってみよう！と決意するものですよね。でも、ご存じのとおり、ほとんどの人は長続きできないものです。ですから、「継続は力なり」とか「塵も積もれば山となる」といった継続をうながすことわざが、昔から言い継がれてきているわけですよね。では、どうすれば継続できるのか、一緒に考えてみましょう。

まず“意志”についてですが、そもそも心理学では、少なくとも行動を起こす力としては、あまりあてにされていません。なぜなら意志とは、例えば人生を航海にたとえるとしたら、船の舵のようなものだからです。意志は、人生という大海で面舵か、取舵か（右に行くか、左に行くか）という方向選択の役割を担っています。大きな選択に限らず、お昼は麺にしようか、ご飯にしようか、といった日常的な小さな選択も、帰宅後にまず筋トレをしようか、ひと休みしてテレビを観ようか、といった選択も、意志という舵が決めています。そうすると、意志の本質は、ただの“選択”であり、本当は強いも弱いもないのです。船でいえば、エンジンに強い、弱いはあっても、舵に強い、弱いはないということと同じです。

意志ではないとすれば、何が強くて、何が弱いのでしょうか。実は、意志の背景にはさまざまな力がはたらいていて、それらの力にこそ“強い”“弱い”があり、その強弱が意志の選択にも大きく影響しています。その力のひとつが、動機またはモチベーションです。欲求や欲望、感情、習慣といったものも、そうした力を構成しています。こうしたさまざまな力のアピールを取りまとめて、ひとつの方向を選ぶのが意志といってよいでしょう。

ですから「筋トレが継続できない」という時に、意志のせいにするよりも、まずは「動機は何だったかな」と自分に問うてみることをおすすめします。何かスポーツに参加するための準備でしょうか、カッコよくなってモテたいのでしょうか、あるいは健康上の理由からでしょうか。あなたの場合、もしかすると、この動機こそ弱い、ということはないでしょうか。動機が弱かったりあいまいだったりすると、当然筋トレは続かないと思います。いくら、「続けるぞ！」と意志の力で力んだところで、意志はコントロールしたり、選択したりするのが本分で、そのパワーは微々たるものです。ですから、意志の力だけで続けようとしても、誰もがせいぜい2～3日続くのがいいところなのです。いわゆるこれが三日坊主ですよね。

継続のひとつのコツは、意志ではなく、動機を強くすることだと思ってください。動機はエネルギーなので、ちょうど船のエンジンに燃料を足すようなもので、増強できれば継続につながります。筋トレの動機が「カッコよくなりたい」だったのであれば、もう一度その動機を思い出して、カッコよくなって得られる結果を想像してみるとよいでしょう。ほかにも何かを継続する上で、例えば「家族のために」などという動機は、非常に強力な武器となり得ます。

一方で、筋トレをするはずの時間に「休みたいなぁ」「遊びたいなぁ」という、前述の力のひとつ、「欲求」が動き出してしまうことがあります。動機を“アクセル”と呼ぶなら、こうした欲求は“ブレーキ”に相当します。これらの欲求は基本的欲求と呼ばれていて、残念ながら、たいていは動機よりも強いパワーを持っているので、ついさぼるほうに流されがちです。そういった場合は、先にこれらの欲求を手なずけておくことをおすすめします。例えば「後で休む時間を取るから、先に5分だけ筋トレしよう」などと自らに声かけするのもひとつの手です。

最後になりましたが、前述のさまざまな力のなかで、いちばん強力なのが習慣です。意志が強いと言われている人たちも、たいていはモチベーションを日々新たにし、あとは、これまで続けてきた習慣による慣性の力に身を任せているだけ、というのが本当のところでしょう。彼らにおいては、練習の継続はほぼ自動化されているため、自分を練習に向けるエネルギーをさほど必要としません。ですから、いったん習慣化することができれば、継続は非常に楽になります。

とりあえずは、動機を日々思い出して強くすることと、「休みたい」「遊びたい」といった欲求をうまく手なずけることとを、試してみてはいかがでしょうか。