ドクターハラスメントの対処法
部署異動をきっかけに、不眠や食欲不振が続き、気持ちも落ち込み気味だったため、自宅近くの精神科を受診しました。初診の問診で、私がしゃべりすぎてしまったり、先生のアドバイスにあまり納得した態度を見せなかったせいなのかもしれませんが、先生からは「性格的な問題なのではないか」「ほかの人はそれぐらいでは病院に行かない」などと言われてしまいました。クリニックを変えることも考えたのですが、田舎なので近くにはありません。また、もともと精神科受診には後ろ向きで、勇気を出して受診したのにこんなことになってしまったため、また新しいクリニックで嫌な思いをしたくないという思いもあります。いまは薬を出してもらうためだけに我慢して受診していますが、もうこのまま治らなくてもよい気もしてきてしまいました。こうしたドクターハラスメントにはどのように対応すべきなのでしょうか。
男性/30代
2021/12/21
不眠や食欲不振、気持ちの落ち込み等、とても辛そうですね。そのうえ、精神科の先生からの心無い言葉で、さらに辛さが増している状況のようで、大変心配です。そのような状況でも、薬を出してもらうために、通院を継続されているのですね。それはつらい気持ちを少しでも和らげたい、早く良くなりたい、という真摯な思いがあるからだと思います。ご自身の回復のために、とてもがんばっておられるのですね。
しかし一方では、先生の言葉や態度を「ドクターハラスメント」と感じておられるのですね。薬を飲み始めてから、どのくらい経っていますか。「治らなくてもよい気もしてきた」とのことですから、飲む前と比べて、ご自身の状態が回復に向かっているという実感は、わいていないということでしょうか。
この精神科の先生の言葉は、つらい症状を抱えている方にとって、酷な印象を与えますが、ここまでではないとしても、これに近いようなことは、あまり珍しくないのが現状です。実際に、ご相談などをお聞きしていると、「本当につらそうだな」「もうぎりぎりな状態で、がんばるのも限界そうだな」という印象の方でも、「精神科に行ったけれど、『通うほどではない』と言われてしまった」というケースは、割とあります。それは精神科の先生自体に、技術的に、あるいは、人間的に問題があるという可能性もありますが、患者さんの状態を軽度に診立ててしまう傾向というのは、あるように感じます。
その原因としては、2つのことが考えられます。ひとつは、精神科の診察は、基本的に問診です。ほかの身体疾患と違って、聴診器やレントゲンなどの検査機器、血液検査などの数値など、客観的な指標を使うわけではありません。患者さんの話の内容はもちろんのこと、話す内容、姿勢、顔色、雰囲気などを観察して、状態の診立てを行います。一方で、診察時間はかなり限られていることが多いのが現状です。患者さんの多い医療機関では、一人あたりの時間が5分とか10分、というところもあります。そのように短時間で、患者さんの状態を間違いなく把握するということは、かなりむずかしいと言わざるを得ません。
もうひとつは、患者さん側の要因です。とくにうつになりやすい性格傾向の方は、概して、まじめで礼儀正しく、ご自身の中で自分の気持ちをためこんでしまう、自力で何とかしようとがんばる方が多いです。医師に対しても、礼儀正しく、自分の気持ちを抑えて、苦しいことをそのまま表現できずに、つい気持ちを張って優等生的にハキハキ答えてしまう、ということが起こりやすいのです。限られた短い時間の中で、初対面の先生に、自分の本当の状態を知ってもらうには、「症状が何であるか」「どのくらい続いているか」「どのくらいつらいのか」ということをある程度整理して、伝えなければならなのですが、それが具合の悪いときには、むずかしいこともあります。
そのような事態を避けるためには、ご家族や会社の上司などに一緒に同席してもらうという方法があります。周囲の人から見たご自身の状態を伝えてもらうということは、正確な状況が伝わりやすいですし、医師と1対1で気後れしてしまい、言いたいことが言えなくなってしまうときに、心強い味方がいるという安心感が生まれます。
しかし、「ドクターハラスメントを受けている」とまで感じてしまうあなたの状態を思うと、本当のところは、他の医者に診てもらった方がよいのではないか、と思います。体の病気もそうですが、メンタルの場合はとくに、医師との信頼関係が大切です。遠方で通うのが不便だとしても、できれば、あなたが「この先生だったら安心して治療を任せられる」と思える医師のところにかかったほうがよいでしょう。医師といえども人間なので、やはり相性はありますし、治療の腕もばらつきがないとは言えません。転院をすぐには決断できなくとも、セカンドオピニオンを受けに行ってみる、という方法もあります。貴重な時間を無駄にせず、心身の健康を取り戻すためにも、ご自身にとって頼りになるお医者さまをぜひ探してみてください。
回答者
保健同人フロンティアメディカルチーム
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