Question

人工透析を受ける前のシャント手術とは?

慢性の腎臓病が悪化し、人工透析を受けることになりました。準備として透析のシャント手術を行うのですが、どのような手順で行われますか?

男性/50代

2022/06/24

Answer

腎臓の機能低下などに伴い、人工透析による治療が必要になることがあります。人工透析の方法は、腹膜透析と血液透析があります。

腹膜透析ではカテーテルを埋め込む手術を行い、血液透析を受ける場合は、血液を体内から外部へ出し、再び体内に戻すための出入口(シャント)をつくる必要があります。シャントを使った血液透析は、透析期間中のトラブルが少なく、経過がよいといわれています。


原因となる病気にかかわらず、腎臓の機能が低下すると、 老廃物(尿毒物質)や過剰な水分がたまったり、カリウムやカルシウムなどの電解質の異常、貧血、体が酸性に傾くなどの状態に陥ります。これらの対処として、食事療法、血圧管理、薬による治療などを行いますが、一般的には、腎機能が正常な状態の10%以下になると透析療法が必要とされています。血液透析は、体の外にくみ出した血液を浄水器のようなフィルターに通すことによって、血液中の老廃物を除く、腎臓が悪くなったために生じたミネラル異常を調節する、余分な水分を除くといったことを行う治療です。治療は専門の医療機関で週3回、1回3~4時間程度行います。


血液透析を受けるには、シャントを作成する必要があります。方法はいくつかありますが、動脈と静脈をつなぐ「シャント造設術(内シャント)」がもっとも一般的で、国内では大半がこの方法をとっているといわれます。血液透析の際は、1分間に200mLの大量の血液を体の外にくみ出す必要があります。静脈は血液の流れが緩く、十分な量の血液を体外に出すことができないため、血圧が高く、血液量の多い動脈を静脈につなぎ合わせてシャントをつくります。シャントは原則として利き腕と反対側の手首の上あたりにつくられます。皮膚の下を並行して走る動脈(橈骨動脈)と静脈(橈側皮静脈)に小さな穴を開け、その血管同士をつなぎ合わせます。一般的に、手術は局所麻酔で行われ、1時間程度で終了します。

手術後、数週間は腕や手がむくむものの、やがて皮膚表面に血管が浮き出て、触ると震えるような血液の流れを感じます。傷が落ち着けば入浴や運動などが可能です。一般に手術後、2~4週間後から透析を開始することが望ましいため、手術は計画的に行われます。

シャントの作成後に注意することは、詰まりや細菌感染、出血していないかなどの点です。シャントを長持ちさせるために、以下のような点に気をつけましょう。

●血液の流れを確認する(シャントの部分に耳を当てて、ザーザーと音がすればよい)

●シャントの側の腕に腕時計など圧迫するものをつけない

●シャントの側の腕で腕枕をしたり、重いものを持ったりしない

●シャントの側の腕で血圧測定や、採血をしない

●手や指、爪を清潔にする

●透析日は入浴を避け、シャワー浴にとどめる

●シャント部分が赤く腫れる、熱を持つ、痛みがある、いつまでも出血が止まらないなどの症状がみられる場合は主治医に連絡する


腎臓は24時間休みなく働きますが、血液透析は通常、1週間に12時間程度しか行わないので、健康な腎臓の働きにはおよびません。このため、日常生活上のさまざまな制限が必要となることが一般的です。食塩や水分の制限などを指示されることが通常ですが、大切なことは十分に食べること、決められたスケジュール通りに透析を行うこと、透析に慣れてきたら運動などでからだを動かすことも必要です。人工透析は複数の方法があるので、個々の状態をもとに医師と相談し、自分に合った方法を選択するとよいでしょう。

回答者

保健同人フロンティアメディカルチーム

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